第171話 なかなか決まらない町名
「グランドガーデン、ロイヤルガーデン、セイントガーデン、ジャスティンガーデン?」
「あなた、庭にこだわりでもあるのかしら」
「別にそうじゃないけど、思いつく限り言ってるんだけど、全然ピンと来ない。だから名付けとか苦手なんだよな!」
「そのくらいで何言ってるのよ!町長でしょ、しっかりしなさい」
「はい、すいません」
ルナが倒れてから取り敢えず二人で考えているのだが一向に良い名前が思いつかない。
「タクト、そんなに思い詰めないの!少し休憩しましょ」
「うん、そうだね」
俺が悩んでいるのを気を使わせてしまったようだ女神様に申し訳ない。
「タクト分かっているわね!例のやつよ!ワクワク」
………もしかして食べたかっただけじゃないよね!イリスさん?
例のヤツ、ここ最近イリスにおやつとして出しているイチオシのお菓子。
「はい、どうぞイリス」
「まぁ!美味しそうなガトーショコラケーキ」
こう言う時だけ子供っぽく笑うイリス。
それを見ると不思議と女神ではなく普通の女性かと思ってしまう。ま〜そんなことは言えないけど。
「イリス様、お待たせしました!」
「うん、ありがとう待ってないけど、相変わらず早いわねアポロン」
「はぁ!イリス様には最高なひとときを!いつでも最高なコーヒーを飲めるよう。タイミングを見計らっております」
「あら……それはちょっと怖いわね」
アポロンやり過ぎ。イリスも流石に引いてるから、恐るべしスーパー信者アポロン。
イリスとおやつを食べながら話をしていると、話題はマルクトでの出来事の話になった。
「そこで死の商人と戦ったんだけどさ〜、良く分からなかったけど即死させる効果が付与された武器を使ってたみたいで、ボク殺されちゃって」
「なんで殺されたのに、言い方が軽く聞こえるのかしら、たま〜に思うけど、あなた少しズレているわよね」
イリスは少し呆れたように言う。
「それはちょっと言い過ぎだよ!生き返れたからそう言ってるだけ」
「そうよ!あなたさっき死んだって言ったけどどうやって生き返ったのよ!あなたにはそんなスキル渡した覚えはないわよ」
「あ〜そうだ!そうだ!それを話ししておかないと殺される!」
「殺される?どう言うことよ」
俺は事の経緯、ヘカテー様について話をした。
「あぁ……それで……通りであなたに私以外の神気が混じったいた訳ね、面倒な女神に絡まれたわね」
はぁ〜とため息をするイリス。
「まったくですよ!何なんですか、あの女神様はメッチャ怖かったですよ!なんて言ったら良いのか、イリス様……なんかやりました?」
「何もやってないわよ!昔からあ〜なのよ。ヘカテーは、私にも分からないわ」
イリスの表情からも分かるけど、ヘカテー様のこと相当苦手なんだろうな。
「でも良かったわね。お陰で助かったんだから、一応ヘカテーには感謝しておかないと」
「ん……ん〜……」
お!ルナさんが起きたみたい。
「大丈夫ですか?何か飲まれますか?」
ルナが倒れてからカミラさんが傍についてくれていた。カミラさんは優しく声をかける。
「あ!……天使様……御美しい……」
「ルナさん、まだ寝ぼけておられる様ですね」
ニコリとカミラさんは笑った。
その言葉を聞き、ルナは一気に覚醒し起き上がった。
「はぁ!?ワタシは……すいません…いきなり何を言っているんだ!いくら美しい方だからと言って天使だと……戯言を言って……」
「いえ、天使なのはあっていますので、気にしないで下さい」
「はぁ!?」
ルナは口をぽかーっと開けてカミラさんをじーっと見つめる。
「ふふっ、そんなに見られると恥ずかしいですね」
「あ!?申し訳ありません!ワタシは一体何を、………あなた様は本当に天使なのですか?」
そこに一人の男が会話に入ってくる。
「そうだぞ!俺のカミさんは天使の様に美しいって言っただろ!今は本当に天使になっちまった。いや〜より美人になって困っちまうぜ!」
「え!?なんで……なんでイグニス様がこちらに居られるのですか!」
「よ!驚いたか?ルナも相変わらず美人さんだけどカミラには……」
「はいはい、イグニス嬉しいわ!でも今はあっちに行ってお水を取ってくる!」
イグニスは「は〜い」と一言言って奥の部屋に水を取りに行った。
まったくお熱いおしどり夫婦なことで、でも……イグニスが尻には敷かれてるな。
俺は仲の良い二人を見て、微笑ましい気分になり、ルナの下へと足を進めた。
「ルナおはよう!目が覚めたみたいだね!」
「え…え〜まだ頭の中が混乱していますが、ここに天使様が居ると言うことは、先程のイリス様も現実と言うことなのですね」
「うん、そうだよ!ここは少し特別な場所だから、女神様も居られるんだよ。ルナごめんね、先に言っておけば良かったよ」
「言え、良いのです。もしも先に言われても信じることが出来たか自信がありませんから」
ルナが少し落ち着いたところにイグニスが水をコップに入れて持ってきてくれた。ルナはそれを一口飲み、再び喋りだす。
「あなたは一体何者なの?もしかして使徒様なの?」
「そうだよ!ボクはイリスの使徒、だから安心して」
ルナは大きな瞳をより大きくして驚き、そして突然抱き締められた。
「あ〜ワタシは間違っていなかった!タクトは素晴らしい人!ついて来て良かった!」
良く分からないけど、ルナは涙を流し喜んでいた。俺はどうすれば良いか分からず、しばらく呆然としてしまった。
少ししてルナは落ち着きを取り戻し立ち上がると、イリスに向かって歩き出し片膝を着き頭を下げる。
「イリス様、先程は大変お見苦しいところをお見せしてしまい大変申し訳ございません」
「別に良いわよ!気にしていないわ」
コーヒーを飲みながら本当に気にしていない様子。
「イリス様、寛大なご配慮感謝致します!イリス様、私は使徒であるタクトと共に行こうかと思います!お許し頂けるでしょうか!」
「えぇ、もちろんよ!あなたの様な真面目で誠実な人がタクトに付いていてくれるなら私も安心よ。タクトを助けてあげてね」
「はい!ありがとうございます。イリス様それではまずは何をするべきでしょうか?」
「そうね〜まずはこの町の名前を一緒に考えてくれる」
ルナは一瞬何のことだろうと考え、すぐに思い出し俺を見る。
その目は「まだそんなことをしていたの?」と言っていた。いかん呆れられている。
「この場所は今後特別な場所になるのよ!みんなで一緒考えましょう」
イリスがみんなに言ってくれたお陰で、この後色々な案が出て来て助かった。
俺はその時、イリスが意外と協力的でちょっと驚いていた。