第167話 今回は簡単 には負けられない!
二人が言い争いをしていた後、なんとか止められないかと声をかけようとしたが、ものすごい目で睨まれオズオズと引き下がってしまった。
二人は戦うことになり、屋敷の庭にある訓練所へと移動、俺はどうしょうこと思っている間に二人の戦闘準備は整った。
「ルナお姉さん、今度は負けませんから、覚悟して下さい」
「面白いですね!ノルンの実力がどの程度になったか確かめさせて頂きます!」
お互い剣を構える。
ノルンは剣を中段に構え相手の動きに合わせて動くつもりだ。意外と冷静なのかもしれない。かたやルナさんは半身になり剣を水平に構え、少し特殊だが剣道で言えば霞の構えと言われるもの、防御を得意とする型であるが、鋭い突きと相手の攻撃を切り返すカウンターが出来る。
「それではお互い準備は良いかな」
「お互い正々堂々とやるんだよ!」
「武器、魔法、スキルの使用制限はかけないが、危険と判断出来ればこちらで止める」
「それと二人が着けているブレスレットには非常時は防衛魔術式がかかっている。非常時…急所への攻撃には防御フィールドが発動して攻撃を防いでくれるが、過度には信用しないでくれ、防御フィールドよりも速い攻撃をすれば当たるし防御フィールドより強い攻撃をすれば当たる。気を付けて欲しい」
えっ!?いつの間にかバロンさんとヴァルト様が居る。しかも取り仕切ってるし。
二人は身体強化スキルと魔力を闘気に変えて近接戦闘能力を高める。
「いつでも良いわ!」
「お願いします!」
それを聞いたバロンさんは、
「宜しい!では………始め!」合図出した。
先に飛び出したのはルナさん、一瞬で接近し鋭い突きを放つ!
ノルンはそれを冷静に見て剣で弾いた。
何度かの打ち合いをした後、二人は一度距離を置く。ノルンから炎が立ち昇り、弧を描くようにルナさんに目掛けて飛んでいく。
『ホーリーアロー』
ルナさんは光の矢でそれを迎撃する。
『天獄の魔眼』
ノルンは炎を制御し分散させ光の矢を躱し、その炎は幾つもの火の玉になり、ルナさん振り注ぐ。
『ホーリーフィールド』
ルナさんの光の結界を張り火の玉を防いだ。
『ファイアソード』
ノルンは剣に炎を纏わせ攻撃力を強化し光の結界を斬り裂き突っ込んて行く。
『ホーリーソード』
ルナさんは剣に光を纏わせ、ノルンの剣を受け止めた。
スゲェ〜、俺は剣士ではないから細い動きについては分からないけど二人共強い。特にノルンは成長期か?また更に腕を上げてる。
ノルンは『天獄の魔眼』で火球を周辺に幾つも浮かばせながらルナさんと打ち合っている。
ノルンは打ち合いながら隙を見て火球を放っているが、それをルナさんは見事に斬る落としていた。
戦いを見た感じからルナさんの方が速いが、それをノルンは火魔法で対応している。
「二人共カッコいいな〜」
剣士ってカッコいいから憧れるわ。
俺の武器なんて工具なんだよな〜
ま〜役には立ってるんだけどさ!
俺は心の中でボヤく。
「そろそろかしらね」
「え!?スカーレットさん、いつの間に!」
スカーレットさんも見に来たみたい。
それにしても皆気配消すのうま過ぎてびっくりするんだけど。やめて!
「あの〜スカーレットさん、そろそろって何のことですか?」
「町でノルンと一緒に戦って分かったのだけど、ノルンはまだまだ『天獄の魔眼』スキルを使いこなせていないのよ。MP(魔力量)が残っていても気力が持たないの。集中を切らせれば、それは剣の撃ち合いにももちろん影響が出るわ。それがそろそろってこと」
「このままだとノルンが負けるってことですか……」
そんな〜……あんなに頑張っているのに。
「でも前よりかはやれるとは思うけわよ。想いが乗っているもの」
スカーレットさんはニコリと笑う。
俺はその時…言っている意味がよく分からなかった。
◆ノルンの視点
やっぱりルナお姉様は強い!だけど負けない!
ルナお姉様の攻撃は突きを主体としつつ、そこから更にもう一段横に薙ぐ。鋭い突きを躱し体勢が崩れたところにもう一撃、でもただの一撃なら私なら受け止めれる。だけどルナお姉様の一撃は重いとてもあの体格からは考えられない程の力、これは恐らく身体強化スキルの差、私よりずっと上のスキルを持っている。
鋭い斬撃を躱しながら、私は火魔法で牽制しながら攻撃を仕掛けていた。
『天獄の魔眼』私のユニークスキル、
このスキルを更に使い火球の動きを変則的にしたり形を変化させたりと試行錯誤して攻撃している。
始めは僅かに動揺が見られたが、今は難なくこなして防がれている。
私の奥の手だったのに、すでに万策が尽きている。今はただそれを続けているだけ、本当なら負けを認めて終わらせるべきなんだろうけど、今回は簡単には負けられない!
タクトと結婚ですって!そんなの聞いてないわよ!タクトと結婚したかったらまずは私を通しなさーい!
ノルンは更に闘気を高め奮起する。