第165話 タクトさんの下に嫁ぎたいと思います!
屋敷に戻るとそこには一人の娘が頬を染めて待っていた。そんな姿を見たことのない私は「ん?」疑問に思い動きを止める。しかし直ぐに娘が無事だったことを喜び駆け寄って抱き締めた。
「無事だったのだな!ルナ、良かった!」
「………………お父様お話があります!」
私は娘を少し娘の顔を見ると真剣な眼差しで私の目を見ていた。
これはかなり重要な話であろう。
私もまた娘の話を真剣に聞く!
「どうしたんた…ルナ、何があった?」
私は優しく娘に声を掛ける。
「ありがとうございます!お父様、ワタシ……タクトさんの下に嫁ぎたいと思います!」
へえ!?………いま…娘はなんと言った?
嫁ぐ?嫁ぐとは何だ?いやいやそれは分かるだろう。落ち着けワタシよ!冷静なるのだ!嫁ぐと言ったが、ルナは生涯独身でいたいと言っていた。これは聖騎士団の務めを果たし人々の守りたいと言う理念があったからだ。しかしルナはセドリック家の長女であることを自覚している。ゆえにいずれは結婚することを認めていた。もちろん相手は自分の意思で選びたいと言っていたし私もそのつもりではあった。
年齢としても17と貴族として考えれば婚約者がいてもおかしくない。良し!おかしなことは言ってないな。うんうん、しかし聞き間違いと言うことはあるな!もう一度聞いてみよう。
「ルナ…すまない。良く聞こえなかったんだ。もう一度言ってくれるかな」
「はい!お父様、
ワタシ……タクトさんの下に嫁ぎたいと思います!」
うむ!……聞き間違いではないようだ。
……………え!?〜え!?〜え!?〜
……………内心穏やかではないが、
これでも貴族の当主、一切動揺している表情を出す訳にはいかない。
…………▽
◆タクトの視点
俺は今回の事件で出た重傷者の治療を行っていたので、大分遅れて屋敷に戻る。
え!?………屋敷に戻ると少し……いや大分雰囲気がおかしい気がする。
なぜか?メッチャヴァルト様が睨まれている。俺の中ではこの方は冷静で穏やかな方だと思っていただけに特に目立つ。それとルナさんは俺を見て頬を染めている。アチャ〜、きっと呪いを解いた時にやり過ぎちゃったからな〜、恥ずかしんだろう。あとで怒られるかも、それはま〜諦めて受けるとして、それ以上に気になる変化があった。ルナさんが……鎧じゃなくて真っ白なドレスを着ている?騎士のイメージが強いが元々ルナさんは相当な美人、そのうえ銀髪と白のドレスがマッチして、人の領域を超えて神々しくも感じる美しさだ。
お〜っと見惚れていると、ノルンが近くまで来て腕をつねられた。
痛い!?仕方ないじゃん!あんな綺麗な人がいたら、見るだろ!………とは思っていても言わない。なぜなら怒られるのは分かってるんだから。
俺はこっそりとノルンに言った。
「な〜ノルン、なんかおかしくないか?
ヴァルト様に睨まれてる気がするし、よく見ると額がピクピクしてるけど。
「タクトくん、あんたとんでもないことをしでかしたわね!セドリック家の御令嬢に手を出すなんて、恐れ知らずにも程があるわよ!」
横からスカーレット様が面白そうに話しかけてきた。
「タクトくんすまない。今回は助けられそうにない。親友がかつてないほど怒っているよ…プフッ……あ〜すまない!……男というものは責任をしっかりと取った方がカッコいい……しかしま〜……オモシロ……ヴァルトのあんな顔初めて見たぞ」
バロンさん、最終的に何が言いたかったんですか?
笑いをなんとか堪らえようとして、堪えきれずに責任を取れて言ってきた。はぁ〜ルナさんの件か、これはしっかりと説明しないとダメなヤツだな!
一瞬寒気がして振り返ると笑顔を貼り付けたような顔をしたヴァルト様が立っていた。
「タクト、君には色々と話をしなければいけないね!まずは死の商人を倒し町の住民を守ってくれて感謝しているよ!もちろんお礼は十分させてもらう。それですまないがとても重要な話がある。しっかりと…じっくりと…君の話を聞かせてほしい」
「ヴァルト様、もちろんそれは良いのですが、ボクもその前に話をさせて頂いた方が良さそうなと…」
俺はものすごい勢いで冷や汗が出る。
「恐らく話はルナさんの件かと思いますが、ボクは決して変なことはしておりません。ルナさんの呪いを解くためにスキルを使っただけです」
「ほう……娘の呪いを解いてくれたことには感謝する。しかしどうしたらああなるのかね」
ルナさんを見る。
手を頬に当て頬を染める。
「うっ……あれは後遺症です!しばらくすれば戻るかと」
「それは本当かね!」
すごい圧をかけられ、それでも「うんうん」と俺は頷いた。
でも……いつまででしょうね。
本当ならとっくに戻っていそうなんだけど、なんでなんだ?
「あの〜……タクトさん、お疲れでしょう。お休み頂いた方が良いです!さ〜こちらにどうぞ!」
ヴァルト様と話をしていると突然ルナさんに手を取られ、そのまま部屋へと連れて行かれたのだが、ヴァルト様の視線がメッチャ怖かった。これはルナさんに言って一緒に説得して貰わないと、………俺は死罪になるな。