第161話 新スキルその名は……
(怠け者……怠け者……)
「なんなんだよ!この声は……チョイウザいぞ!小馬鹿にしてるのか!」
俺はやや苛立ちながらも新しいスキルが手に入ると思い我慢して聞いていると、最初は自分の中から聴こえたように感じていたが、今は別の場所から聴こえる。
声が聞こえる方に振り向くと……
「おい!オマエは何をやってるんだ!」
「あれ!……バレちゃった?」
そこには俺の後ろから耳元にささやくカンナが居た。
「も〜う心配したんやからバカ〜!死んだかと思うたわ!」
カンナは目に涙を溜め怒る!
そしてその涙を拭うと俺に抱きつく。
「あんまり心配させんなや!ウチとタクトは一心同体やで!勝手に死ぬなや!アホ」
俺は口元を緩ませ、カンナの頭を撫でた。
「悪かったな。カンナ、そうだな俺達は一心同体、相棒!これからも宜しくな!」
「うん!……しゃ〜ないな〜!付き合ってやるわ!」
カンナは泣き顔より笑顔が一番だな!
「せや!タクトの新しいスキル!完成したみたいやで!」
「お!本当か!やったぜ!それでどんな力なんだ?ん?でも何でカンナに分かるんだ?」
カンナは俺が元々もっているツールボックスと言うスキル、ヘカテー様に与えられたスキルは知らないと思っていたけど。
「せやな!ウチはタクトのスキルやから、それ以外は知らんのが普通なんやけど、ヘカテー様は変わった方法でタクトにスキルを与えた。あくまでタクトにあった力を与えようとしたんや!そうなってくるとウチのこと知らんとやっていかれへんやろ!だからスキルの方からウチに接触してきたんや!そんで仲良くなったわ!スキルとしては別やけど、お互いに干渉出来る関係になった」
「なるほど、ならボクの新しいスキルの名前を聞いてもいいかな」!
「もちろんやで、新スキルの名は『陰陽道』生と死を司るヘカテー様の力がタクトの中に交じって出来たスキル。光と闇、陽と陰、どちらかと言うと元の世界の力に変化したみたいやな」
「陰陽道か〜、あんまり良く分かって無いんだよな。映画とかアニメで安倍晴明が妖怪を倒しているイメージはあるんだけど、あとは五芒星とか太極図?……そのくらいしか思いつかん」
「ま〜ええやないの!そんなもん知らんでもスキルは使えればええんやから」
「ま!そうだな!それでどんな能力なんだ!教えてくれ」
いや〜どんな能力だろう!ワクワク
「ワクワクしてんのは分かるんやけど、凄いんやけどあんまり期待せん方がええかもしれへんで、あんまオモロないスキルが三つや!」
・冥界への許可
・天界への許可
・視える人
なにそれ……オモロないです。
「冥界と天界については、う〜んそうやななんて言ったらええんやろう。冥界はいわゆるあの世でヘカテー様に会えに行ける。天界は天使や女神様が住まう場所、そこに行ける許可を頂いたちゅうことやな!」
う〜んそれって、あんま役に立たん。
イリスやカミラさんに会えればいいから天界に行く必要はない。ヘカテー様………あまり会いたくない。冥界の許可もいらん!
「何だそれ使えねぇ〜……それであと一つ視える人ってなんなんだ?」
「幽霊が視えるんや!う〜ら〜め〜し〜や〜……どうや怖いやろ!」
カンナが胸の前に手を構えおばけのマネをする。なんかイラッとするけどかわいい。
「はぁ〜マジかよ!視たいような視たくないような。しかも視えても何の役に立つのか、良くわからない。これも使い所に困りそうだな」
「せやな、そのスキルムズいでぇ!」
俺とカンナは考えていたけど、そんなことより早く戻った方がいいと思い。暖かい方へと足を進めた。
……………▽
◆バロンの視点
「タクトくん!?」
バタリと倒れたかれに駆け寄る。
「そ…そんな…………息を…していない」
タクトくん…クソ!君はこんなところで死んではいけないんだ!頼むしかないでくれー。
「その少年はあの世へと旅立った。次はどちらが先に逝くのか決めても良いぞ!」
死の商人は大鎌を構えるが攻撃を直ぐには仕掛けてこない。私達を殺すことなど造作もないと思っているのか、しかし今のは何だ!なぜタクトくんが死んだ!?
「ホホッ、疑問か?バロンよ!その少年が死んでしまったことが!」
「黙れ!……キサマは絶対に許さん!」
これ程の怒り、いつぶりだろうか、コイツは私が斬り倒す。
「なんじゃ〜せっかく教えてやろうかと思ったんじゃが、知りたくはないのかバロン」
「オマエとはもう喋りたくない」
「待て!バロン…落ち着け、冷静にならずに突っ込めば殺される。タクトくんのことは分かるが落ち着いてくれ」
ヴァルトが私を止める。
分かっている!分かっているさ!
しかしそう簡単に止められるものでもない。
私はヴァルトの静止を聞かず突っ込んで行こうとした時だった。
「ブハァー!……死ぬかと思ったーー!………………あ!?いや、一応死んでいたのか」
突然タクトくんが息を吹き返したのだ!
これには私もヴァルトも驚き動きを止めた。
「な!?な!?なぜキサマが生きている!?確かにこのデスサイズでキサマに傷を負わせたはずだ!」
死の商人は今まで見せたことのない程の動揺が伺える。今なら一撃いれるのは容易だったかもしれないが、私も驚き過ぎて動く事が出来なかった。
「ん?生き返っただけだよ!死の商人、あんたが甘いから簡単に戻れだぜ!でもま〜あの世はしばらく勘弁願いたいんで、もうその攻撃は受けるつもりはない!次はあんたの番だ!」
まったく恐れ入る。さっきまで死んでいた男が何事もないように立ち上がり、そして強い眼差しを向けていた。強い!強いぞ!この男は!やはりタクトくん、君はここで死ぬような男ではなかったか、では私も微力ながら力を貸そう。
私は再び剣を構えた。