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第158話 死の商人


 死の商人、ゆらりとその身を立ち上がらせると、その手には大鎌を持っていた。ヤツから放たれた闘気オーラからも分かる。直接来る!


 俺は左手を前にだし、いつでも空間障壁を張れるような体勢を取り、片手にはハンマーを持ち備えた。


「人の死は廻る!少年、お前の死もまた別の者へと廻るであろう。死を与えよう『デスサイズ』」


 死の商人が持つ大鎌が怪しく紫色に光る。さらに影から闇(黒いモヤ)が纏わりつき、一回り大きな大鎌となった。


「少年、お前の命を刈り取ろうぞ!」

 

 大鎌を大きく振り上げ死の商人は弧を描くように俺めがけて飛んで来た。


『空間障壁』


 俺は空間障壁を張り大鎌を受け止め、即座にハンマーで反撃する……つもりだった。でもそうはならなかった。大鎌は空間障壁を何の抵抗もなくすり抜け、狂気の刃は俺の腕切り裂いた。


「ガァッ!?」

 痛みより驚き、なんで?どうして?

 圧倒的な防御力の信頼性があった故に、その衝撃は俺の動きを鈍らせた。


「よいや、よいや、その表情、悪魔が好きな恐怖、悪魔から喜びを感じるわ」


 大鎌は当たり前のように空間障壁をすり抜け、俺の首めがけて大鎌を振った!


「させん!」


 俺の首に大鎌が当たる直前、バロンさんが剣で大鎌を弾き飛ばす。


 俺は足をもたつかせたがらなんとか耐える。


 何やってるんだ俺は、今は戦いの最中だぞ!しっかりしろ!心の中で自分を叱咤し心を奮い立たせる。


 死の商人はなぜか追撃はせず後ろへと下がる。


「死は刻まれた!命を刈り取ろうぞ」

 死の商人は俺の腕に指を指し言った。

 腕の傷はパックリと10cm程切られているが、絆創膏ばんそうこうを貼っておけばすぐに治る。大したことはない。


「うっ……なんだこれは!?」

 突然目の前がボーッとして視界が歪む。まともの立っていられず足をふらつかせながら俺はバタリと倒れた。

 何が起こったのか分からず顔をあげると死の商人がいやらしく笑ったのが見えた。

 徐々に薄れる意識の中、闇に落ちる恐怖が俺の心を埋め尽くした。



…………▽



(あれから俺はどうなった?)


 周りは真っ暗なのに足元だけは見える。

 頭がボーッとしたまま足だけが前えと進む。

 

 進んで行くと前にスポットライトで照らされたような空間が、そこにポツンと椅子が置かれてあった。


(長く歩いたから座りたい)


 俺は自然と椅子に腰掛けた。


(え!?……誰かが目の前に居る)


 目の前に人の影が見えた。

 薄い布をカーテンの様にかけられて、ハッキリと姿は見えないけど、たぶん女性の影。


「こんにちは、ご機嫌はいかがかしら」


「…………分かりません、頭がモヤモヤしますけど身体の調子が悪い、そう言う訳でもない。なんて言ったら良いのか、ただ考えるのがイヤな気がします」


(俺は誰なのか知らない人に、なんと躊躇もなく答えてしまった。………でも考えたくないし)


「そう、それは仕方のないことかしら、ここは死の世界、死者が来る場所なの、生きる意思を持ってはダメ、だってあなたは死んでいるのだから」


(あ、そうか、俺は死んだんだ。だからもう生きてはダメで考えてもダメ、虚無でいないとダメなのか………へーー」


「てぇ!?そりゃーダメだ!ボクにはまだやらないといけないことがある!それに二度目の人生まだ謳歌していないぞ!」


「それでもあなたは死にました。ですのでそれは諦めて下さい」


 淡々と喋る女性、その言葉からは一切の温かみを感じず、ただ同時に冷たいとも感じなかった。


「イヤです!諦めたくありません!戻る方法とかありませんかね。まだ死にたくないんですよ〜」


 自分で言っておいてなんたが、そんなの誰でもそうだろう。そんな無茶簡単に通るとは思えないがそれでも諦められない。だからやるだけのことはやってやる。


「タクトさんは死ぬのがイヤですか……分かりました。それでは生き返らせてあげます」


「えっ!?……本当に!?……しかもそんなに簡単に!せめて何か試練とか受けるんじゃないのですか?」


 あまりにもあっさりと生きることを許可してくれた。てっきり問答無用であの世行き決定!そんな感じで言われるのかと思ってたんだけど。


 そもそも……この人誰だ?

 女性であると思うけどあの世に居る言われる閻魔大王様なのか、もしくはそれと同じ存在なのかと思っていた。だけど確認はしていない。


「タクトさんは試練を受けたいのですか?それであれば用意をしますが」


「いやいやいや、そうじゃないです!違います!あまりにもあっさりと生き返れると聞いて、ちょっと疑ってしまって、それにあなたは誰なんですか?」


「そうでした自己紹介がまだでした。申し訳ありません。私はヘカテーと申します。冥界の管理者をしている女神です。あなたにはいつもニキがお世話になっていますね」


「えーーマジですか!?」


 まさかの場所で女神様と遭遇することになった。

 

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