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異世界では平穏な生活を目指します!チートスキル『ツールボックス』を活用した平和な国作り  作者: 鉄馬 メウ


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第153話 死の商人


「驚いたな!娘が帰ってきたと聞いて来たら予想外のお客様だ」


「やぁヴァルト卿お久しぶり」

 軽く手を挙げて挨拶するバロンさん。


「なんだ、随分と身軽そうじゃないか、貴族と言う肩書きは相当重かった様だなバロン」


「まったくだよ。今は身軽で仕方ない」


「そうか、それだけ冗談が言えるなら大丈夫そうだな親友よ!」


 ヴァルト卿はバロンさんの傍により肩に手を置き喜んでいた。きっと町での話を聞いてからずっと心配してくれていたのだろう。表情を見れば分かった。


「ここで話すのもなんだ、屋敷に入ろう。ルナも良く来てくれた。恐らく用件は同じだろう。一緒に来てくれ」


「はい、分かりました」


…………▽


 俺達は広々とした客室に通され席に座るとメイドがそれぞれの席に飲み物を配る。


 おっとそうだ!せっかくだしこのタイミングが良いだろ。


「ヴァルト様、もしよければこちらのデザートをお召し上がり下さい」


 以前出した濃厚ベイクドチーズケーキ、ルナさんのご希望のケーキだ。しかし出した後のヴァルト様の反応が良くない。なぜに?


「タクトくん、いきなりだとちょっと困るのよ。私達のことは信用してくれているとは思うけどヴァルト卿は貴族、狙われる可能性がある以上、食べ物には慎重な行動が求められるわ」


 スカーレットさんの一言にハッとする。そりゃ〜そうか!俺みたいなどこの馬の骨だか分からないヤツの食べ物なんて怪しくて食べられたもんじゃない。


「いや、すまない、そんなつもりでは無かったんだが突然だったのでびっくりしてしまったよ。それでは頂くとしよう」


「あ!そんな無理をなさらず、申し訳ありません気が回っておりませんでした。こちらの方は私達で処理させて頂きます」


 これはまずいことをしたと、俺はそそくさとケーキを片付けようとした。


「君は確かタクトくんだったね。ここに来てこれほど美味しそうなケーキをお預けとは随分と酷いじゃないか」


 少し楽しそうにヴァルト様が言った。


「えぇ〜そんなつもりでは〜」

 

 俺はあたふたしケーキをしまうかそれともこのままにするかと迷い手を出したり引っ込めたりしていると。


「ごめんよ。これに毒が入っていないのは私の娘が証明してくれたから食べさせて欲しい」


 ヴァルト様はケーキの乗った皿を手元に持って行く。

 でも助かった〜ルナさんが毒を判別する力を持っていたとは、ありがとうと感謝の思いを込めてルナさんに視線を向ける。


「う〜〜ん、おいしい〜」

 片手を頬に当て光悦した表情でケーキをすでに食べていた。


………もしかして!?……普通食べている?


 再びヴァルト様に視線を向ける。


「あんなに娘が夢中になって食べる物に毒など入っているわけがない。それでは私も頂こう。………うーーん美味い!?」


 驚きの表情に変わるヴァルト様、色々と焦らされたけど、なんとか上手くいったか、はぁ〜貴族相手は疲れる。


…………▽


「ヴァルト、まずは感謝させてくれ、町の住民を受入れたことを感謝する」


「何言ってるんだよバロン、困った時はいつでも言ってくれ、私はお前に頼られるのが嬉しいんだからな。親友」


「ヴァルト、嬉しいんだが、それで良いのか?俺は下位の貴族どころか、今は一般人だからな」


「そんなのは関係ないさ、私はお前を一人の人間として見ているんだ。あんまり悲しいこと言うなよ」


 しばらくヴァルト様とバロンさんが話をしていたけど、その時の会話には俺も少し驚かされた。意外とヴァルト様はフレンドリーな方だった。


「それにしても心配したぞ!父上からお前達を捕えるために国王軍が動いたと聞いた時は、しかも部隊を率いているのがラゴゥじゃ〜話にはならないだろうし」


「ま〜そうだな、話には全然ならなかった。本当に困ったヤツだよ」


「その言い方だと、国王軍を退けたのか、流石だなバロン」


 ヴァルト様は心底驚いている。


「ま〜そうだな。でも私が凄いのではない。こちらに居るタクトくんのおかげさ」


「君のような少年が……」

 ヴァルト様は俺を見て「一体彼にどの様な力があるのだ?」と疑問の表情が伺える。


「父上、彼には特別な力が御座います。私も以前聖女様とアイリスを連れて移動していた時、彼に助けられました」


「ほぉ!それは驚きだ。是非とも一度見せて頂きたいものだ」


 この時ヴァルト様から何か品定めをする様な目で見られた。一体何を考えていたのやら、貴族のイメージがあまり良くない俺としては悪い方向に考えてしまう。


「ま〜それはそのうちにしてくれ、それよりも今はローラン提督はどこだ?王都にいるのか?」


「あ〜今も王都に居る。王都の反乱を聞いてから一度も戻っていない。今回のことはそれ程大事件と言うことだ」


「そうか、それでもう一つお前は大丈夫だったか、ここは王都からは少し離れてはいるが、狙われる可能性があると思って心配していたのだが」


「あ〜あの話か……貴族殺し、その話は私も聞き及んでいる。すでに十人以上殺害されている。これは反乱軍の仕業と言われているが」


「そうだ!裏でゴエティアが動いている。しかもここ最近話題に上がっていた死の商人」


「まったくもって面倒な相手だ。ルナもそれを心配して来てくれたのだな」


「はい…父上、その情報は教会にも入りました。そして死の商人、我々も以前から追ってはいるのですが未だにその足取りを掴むことが出来ず、父上達が狙われるかもしれないと思い、居ても立っても居られず、駆けつけた次第です」


「そうかありがとう。私は優しい娘を持った。それに聖騎士であるルナであれば悪魔を相手にするのに適任と言うわけか、私もこれで安心出来ると言うものだ」


 ルナさんは聖魔法を使える騎士、相手が悪魔ならその力は絶大だ!これ程心強いことはないかも知れない。



『『なんと楽観的であるか、若輩者どもよ』』


 全員が声がした方向へ向く。

 部屋の角に座る一人の男、

 フードをかぶり顔には鬼の様な仮面を付けていた。


「君は何者かね」

 警戒する中でヴァルト様が声をかけた。


「ワシかね。お前達が呼んでいる言葉を借りれば

『死の商人』お前達に死を届けに来たのだよ」


 

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