第151話 大魔導師……その名は
なんやかんやで俺がこの町の町長をすることに決まり、話はだいたい終わったかなと思った時だった。
「タクトくん、すまないが一つお願いがあるのだが」
「はい、なんでしょうかバロン様」
俺が返事をすると何故かバロン様は苦笑い。
「アハハハ、タクトくん流石にもう良いだろ。様は要らないよ。私は貴族ではもうないのだから、むしろ新たに町長となったタクトくん様を付けないといけなかいな〜」
「いや、やめて下さい。言った瞬間震え上がりますよボク、でも確かに……これからはバロンさんとお呼びしますね!それで何ですかお願いごとって?」
「それなんだが、私をマルクトへ連れて行って欲しい。一度ローラン提督とヴァルト卿に話がしたい」
「王都の件ですね。それと貴族殺し、この対象に二人がなるかもしれない」
「流石はタクトくん話が早くて助かるよ。あの方々には大変世話になっていたから、特に心配なのだよ。もちろん情報はすでに聞き及んでいるとは思うが、それでも心配なのは変わらない。会って話がしたいのだよ。それに新しい情報が聞けるかもしれない」
「そうですね〜……良いですよ。行きましょ。行くのは明日で宜しいですか」
「あぁ、それで構わないよ。私も少し準備がしたいから助かるよ」
これで話し合いは終わり解散となった。
俺は魔導ショップのおっさんに用があったので、声をかけておっさんの家に行く。
…………▽
「おほぉ〜……すげぇ!すげぇ!すげぇ!すげぇ〜」
おっさんがタコ踊りをしている。
俺はダンジョンで手に入れた魔物の素材や魔石をテーブルのうえに置き、それを見たおっさんは感激のあまり踊っているのだが、おっさんの踊りなど見たくはない。さっさと話をさせろ!
「へぇ〜これは私も見たことないわね〜」
おっさんの奥さんエルシーさんはドラゴンオーガの角を手に取り真剣な表情で考えている。エルシーさんはムチでおっさんを叩いているドSな時のイメージが強く以外に感じたけど、この人は大手の魔導ショップの娘さん、それなりに興味を示してもおかしくはないか。
「そうだな!俺も見たことないぜ!それにドラゴンの牙やら爪やらがこんなに大量に、一体俺に何をやらせるつもりだ旦那!」
「旦那?坊主じゃないの」
「そりゃ〜そうだろ。歳は遥かに下かもしんねぇ〜けど俺は旦那を尊敬してるし何より世話になってる。いつまでも坊主ってのは失礼にも程があると思ってな!だからこれから旦那ってよばせてもらうぜ!」
ほぉ〜、坊主から旦那に昇格したか、これも町長って立場になるうえでは必要かもな。ただ普通に名前を呼んでくれても良いんだけど、おっさんはそう言うタイプじゃなさそうだから、ま〜これでいっか。
「そんじゃ旦那で、そんで本題だけど、今ここに置いた素材で何か作れって話じゃないんだ。これは報酬、これから色々と人が増えるかもしれないから、生活に役に立ちそうな物を作って欲しくってさ。お願い出来るかな〜」
「おうよ!お安い御用さ、作る物はこちらで適当に考えて作って良いのか?それとも事前に案を提出した方が良いか?」
「う〜ん……取り敢えずおっさんに任せるよ!」
無駄な物が出来るもしれないけど、ここは一度おっさんに任せよう。面倒だし。出来た物によっては考え直すかもしれないけど、それは今後のことということで。
「そんじゃ〜宜しくおっさん!」
俺はおっさん達に挨拶をして次に行かないと行けないところがあった。
…………▽
「イリスいい加減にしてくれよ」
教会が!教会が!えらいこっちゃ〜!
てっきり教会の中だけだと思っていた。
「なかなか良い感じでしょ」
いつもより自然な笑顔で笑うイリス、それだけに嬉しいのかもしれないけど、
……………センスが良くない!
元々は白を基調とした建物だったのに、今は黄色と黒のストライプ、注意か危険でも知らせる建物か〜?それに屋根に十字架が飾られていたはずだけど、そこには強大なクマのヌイグルミが抱き着いている。タワーに登ったキ◯グコングかよ!
「ハァ〜ハァ〜…これで宜しいでしょうかイリス様」
顔に黄色ペンキを付けたアボロンが走って来る。
「えぇ〜良い感じよ!あとあちらの窓にこれを飾ってくれるかしら」
「はい!喜んでやらせて頂きます!」
イリスが渡したのはチェーン、それをアボロンが窓際にパーティーの飾り付けの様に付けていく。
「はぁ〜………ま!いっか本人達は嬉しそうだし、今後来た人達が嫌がらなければ問題ないか」
でも実際はダメに決まってるだろ!と思う。
それが言えないのが俺のダメなところなんだよ!
とほほ………
「イリス一つ聞き忘れていたことがあるんだけど」
「ん?何かしら」
「もう一人の使徒の件、せめて名前だけでも教えて貰えないかな」
「ん〜………そのくらいなら良いけれども、何でそんなのが知りたいの、大して意味はないように思うのだけれど」
首を傾げるイリス、ま〜実際大した意味はないんだけど。
「一応同じイリスの使徒なんで出来れば仲良くしたいな〜と思って、そうなると会った時に名前で呼びかけたいんですよ」
「たったそれだけ?」
イリスにぽけーっと見つめられる。
何を考えているんだと思われていそう。
「それだけですよ。そんなにおかしいですか?」
「別に……えーっと名前ね!
名前はキョウカ・ダイモンジ、
あなたより少し歳上の女性よ!」
「キョウカ・ダイモンジ………ん?まさか!?」
「あら?どうしたのかしら」
「イリス、その人って異世界人なんだよな!」
「良くわかったわね。………そう言えばあなたは転生者だったわね。そう言うこと、同郷の仲間ってことかしら」
「仲間って言うのは言い過ぎかもしれないけど、説得はしやすくなったかも」
「うふっ……面白くなってきたわね」
「面白いのはイリスだけだよ!」
以外なところにヒントが隠れていた。なんとなく会話のきっかけに名前を聞いておこうと思ったけど、想像以上の収穫、しかも名前からして日本人、これなら話が出来る。
大魔導師キョウカ・ダイモンジ、会うのが楽しみになった。