第147話 幸せの裏で嫉妬の炎を燃やして!
まさに奇跡の光景だな。
イグニスはカミラさんと再会することが出来たんだ。
「思ったより早かったわね。良くやったわ」
「いきなり横に現れないでよ。びっくりするだろ!イリス」
「良いでしょ、あなたのご要望に応えたんだから」
「そうだなイリスありがとう」
「えぇ、どういたしまして」
……………▽
俺はイグニスとカミラさんを二人っきりにしたくってイリスと教会を出る。
「イリスは教会から普通に出れるんだな」
「ここの空間が特別なのよ。見られるリスクが少なくて助かるわ〜……う〜ん……たまには地上もいいわね」
イリスは背伸びをして気持ち良さそうな顔をしていた。
タッタッタッタッタッ…………
走る音が聞こえる。
「お〜いタクト〜………待たせたな!
………なんで外に出てるんだ?」
アポロンと神父さまがごちゃごちゃと色んな物を袋に詰めて戻って来た。
「あ〜アポロンお疲れさん、ごめんちょっと待ってくれるかな〜教会の中……取り込み中なんだ」
「はぁ?なに悠長なことを言ってるんだ。さっさと準備して教会を再開しないとダメだろ!」
あちゃ〜……面倒だな〜この状態のアポロンを止めるのは大変だぞ。
「あなた、少しは待ってあげなさい。慌てなくて大丈夫だから」
イリスがすまし顔でアポロンを止める。
あんまり顔には出さないけどイリスもカミラさんのことを考えているんだな。
「誰だコイツ?なんでお前の言うことを聞かないといけないんだよ!」
おい!?アポロンなんてことを言うんだよ!
……はぁ!そうか、アポロンはイリスのことが分かっていないから、ヤバい!これ以上の失言は死に繋がる。
「このバカ息子がぁー!」
神父さまがアポロンに拳骨を頭に叩き込む、ドンッと鈍い音を鳴らしアポロンは撃沈、頭からケムリがたっているけど、大丈夫なの?
「大変申しわけ御座いません。バカ息子の発言をお許し下さい。イリス様」
深々と頭を下げる神父さま。
神父さまは一目見てすぐに気がついていた。
アポロンの後ろで驚き、アポロンの発言を聞いて青ざめていたのには俺も気がついていた。
「なぁ!?」
アポロンは神父さまの言葉を聞き、一気に目を覚まし立ち上がる。そしてイリスを見てハッとなり、
「申し訳御座いませんでした〜」
地面に頭突きをしながら謝っていた。
「別にいいわよ。そんなことで怒ったりしないわ。そもそもここに女神が居るなんて誰が思うのよ。気が付かなくてもしかたないわ」
「まぁ!そうだよな。それにマルクトの大聖堂にあったイリスの銅像とは似ても似つかない姿…………」
ゾクリ……突然横から怒気を感じる。
「あら?それはどう言う意味かしらタクト〜、内容によってはあなたは空間の狭間に消えることになるけれど」
俺はスーッと頭を下げ、
「勘違いでありました〜イリス様は美人でスタイル抜群そして心優しい女神様であります。ですのでご容赦して頂きたく宜しくお願いします」
「あらそう!嬉しいこと言ってくれるわねタクト」
ほぉ……なんとか助かった。
「それじゃ〜竜巻地獄で許してあげるわ」
へぇ?………許してはくれないんだ〜
俺の足元に緑の光と魔法陣が展開、突き上げる様な突風が吹き、一気に上空に飛ばされると、下から巨大た竜巻が現れ、俺の身体は洗濯機の中に入れられた様にグチャグチャに吹き飛ばされた。
……▽
「オェェーー」
なんとか竜巻から脱出出来たのは良かったけど、その後も大変だった。気持ち悪いやら、目が回るやらでしばらくまともに動けなかった。
「おう……これはどう言う状況だ?」
教会からイグニスが出て来た。
ぶっ倒れている俺を見て何があったのか分からず戸惑い足を止めるイグニス。
「どうしたのイグニス、イリス様にご挨拶しないとダメよ!堅苦しいのは苦手とかそう言う問題じゃないからね」
イグニスの後ろからカミラさんが顔を出した。
「わ〜ってるよ!いくらなんでもそんな失礼なことするほど肝は座ってねぇ〜、それにこれ以上の内容なんてないからな。喜んで土下座して感謝してぇ〜よ!」
「要らないわよ!そんなの」
腕を組み……冷たい視線を俺に向けて喋るイリス、俺は放っておいて、もう少しイグニスに意識を向けて欲しい。俺はまだ気分が悪いんだよ!
「イリス様!そんなわけにはいきません!こうして妻のカミラに会うことが出来ました。何を言っても感謝を伝えきれませんが、それでも言わせて下さい」
イグニスはイリスの傍まで行き、地面に膝を突き、手のひらを地に付け、額が地に付くまで伏せる。
「は〜要らないって言ってるでしょ!私はあなたに感謝されるようなことはしていないのだから、私は自分がやってもいないことで感謝されて嬉しがるほど困ってないのよ。優秀な女神なんだから」
「しかし…俺はあなたに助けられた」
「だから違うの、もしも助けられた。感謝したいと思うならここで転がってるおバカさんに言うのね」
「あたぁ!」
イリスにデコピンをされた!
それがまた痛いのなんのって、なんでこんなに小さいのにバワーがあるんだ〜
俺は痛みのあまり転げ回る。
「それはどう言う意味でしょうか」
イグニスは首を傾げた。
「イグニス、それについては私が後で教えるわ。イリス様、それにタクトくん、本当にありがとう。もう絶対イグニスと会えないと思っておりました。お二人には恩に報いれるよう働かせて頂きます。宜しくお願いします」
カミラさんは深々と頭を下げ、それに習うようにイグニスも頭を下げた。
俺としては感謝されるのは嬉しいけど、実のところ大したことはしていない。教会を建てただけだ。仮にカミラさんのことがなくても、イリスに言われて無理矢理にでも建てることになっただろうし。
「気にしないで下さい。ボクとしては二人が幸せって感じてるなら嬉しいです!これからもきっと色々とあると思いますけど、二人なら乗り越えられると思いますので頑張って下さい」
俺はニコリと笑顔を二人に向けた。しかし内心では嫉妬の炎を燃やしていた。
(なんて幸せそんなんだ〜!おのれイグニス〜)
大人のお姉さん系のカミラを取り逃がしたと心の中でガックリと肩を落とす俺であった。