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異世界では平穏な生活を目指します!チートスキル『ツールボックス』を活用した平和な国作り  作者: 鉄馬 メウ


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第146話 教会の奇跡


 俺達はまず冒険者ギルドへ向かう。

 ここでは素材の換金と冒険者ランクの更新を目的に来た。受付嬢のシャティーが対応してくれたのだが、討伐したドラゴンやドラゴンオーガを見せると、しばらく休ませてと言って奥の部屋に入ってしまった。ちょっとびっくりさせ過ぎてしまったかも知れない。申し訳ないことをした。その後変わりの受付嬢が来てくれたのだが、私では対応出来ないとギルドマスターを呼びに行った。なかなか話が進まず。少しイラつくみんな、しかし帰るわけにはいかない。素材を換金してお金を頂くまでは、それからギルドマスターが対応してくれたのだが、相当な金額になり今すぐに全ての支払いが出来ないと断られた。おい!そんなバカなことがあるか!ここは其の辺の小さなギルドじゃないんだぞ!そのくらい用意しておけと思ったが金額を聞いて仕方ないと納得、500億円それが今回の報酬、少し時間がかかったが予定の十倍の資金を手に入れることが出来た。ちなみにノルンとアポロンは一気にBランク冒険者となる。


 これでお金には当分困ることはない。

 俺達は目的を達成し空間転移で帰宅する。



「ん、ん〜……先生の芸術がさらにデカくなってる」


 以前見た時に比べて大きくなった大木は30メートル近くまで伸びていた。もちろん普通ならこんな急成長はしない。先生と地の精霊による力によるものだがかなり立派に育ったものだ。なんと言うか生命が漲るそんな強さと青々とした葉の色が綺麗に見える。確かにこれは一つの芸術なのかも知れない。


「お〜い、帰ったのか、おかえり」

「タクトおかえりなのじゃ」

「皆さん、おかえりなさい」


「ただいま、先生、イグニス、そして神父さま!?」

 三人は大木を眺めながら一杯やっていたようだが、いつの間にか神父さままで加わってる!?


「親父……聖職者たるもの酒に溺れてはならないじゃなかったか」


「アポロン問題ないさ、酒に溺れてはいない」


「そうか、俺の記憶では一ヶ月前に禁酒するって聞いたぞ」


「解禁しました!」


「少しは悪びれる!堂々と言ってるんじゃねぇ〜よ!イリス様に謝れバカ親父」


「それも問題ありません。教会では祈れませんが毎朝祈りは捧げています。今日お酒を飲むことをお伝えしてから飲んでいます。なんの問題もありません。ホッホッホ……グビッ」


 神父さまは豪快にゴクゴク飲んでいる。この人相当酒好きだな。それを見たアポロンはガミガミと注意して騒いでいる。


「そうだ、丁度良かった神父さま、教会を建てたいんですけど、後で相談に乗って頂けますか?」


「タクトくんそれは……」

「タクトお前それは……」

 二人共教会と聞いて一瞬で反応、さっきまで言い合いしてたのに、それだけ二人にとっては特別なものだもんな。


「神父さま、アポロン、ここに教会を建てます!これは決定事項なのです。イリス様の神託ですよ!だから手伝って下さい」


「タクトくん、君はなんて素晴らしい男なんだ!」

「タクト〜俺はお前について行くぜ〜!」 


「えー!?ちょっとくっつかないで二人共」

 二人は感動のあまり泣きながら俺に抱きつく、しかも力が強い!く、くるしい〜……


 少し休憩してからやろうかと思っていたのに神父さまとアポロンが目をギラギラとさせて俺に訴えてきたので、そうそうに建てることにした。


「な〜なんで俺まで行かないといけないんだ?暇だから良いけどよ〜。大きな声じゃ言えないけどよ。俺ってあんまり神様とかに祈らないんだわ」


「それはまた、イグニスって一応女神様に認められた勇者なんだよね」


「だから何度も言ってるだろ!俺は勇者スキル持ってないって、俺は勇者の剣を持ってるだけだ」


「逆に祈ってないから勇者スキル貰えなかったんじゃないの」


「それを言われるとよ〜痛え〜つ〜か、そうかもだけどよ〜。はぁ〜そう言えばカミラにも言われたっけか、たまには教会に行きなさいって、俺じっとしてるの苦手なんだよ」


「はぁ〜まったく火の勇者の肩書きが泣いてるよ!ま!いいや、これからは毎日祈りたくなるから今日は我慢してついて来てよ」


「お…おう、なんでそんなに必死なんだ?」


「黙ってついて来て」


 イグニスの為なんだから、四の五の言わずついてこさせた。


「この辺で良いですかね!神父さま」

 

 そう言ったものの特に風景も変わらず、ここには家が五軒あるのと大木があるだけでどこへ言っても殺風景、だけどこの辺がこの空間の中心付近なので良いかな〜と思った。


「えぇ、ここで大丈夫です。タクトくん宜しくお願いします」


 神父さま……ソワソワし過ぎて落ち着きがない。早いところ建てないと興奮し過ぎて倒れそうだ。


「それではポチッとな!」


 すでに教会は神父さまとアポロンに相談しつつ選んでおいた。だから後はタブレットで購入するだけ。


「「おおおおお………!?」」

 神父さまとアポロンから感激の雄叫びが上がる。


 建てた教会は元々町にあった教会より少々こじんまりとして小さいけど、ここの住民の人数を考えればこれで十分、中に入ると中央の奥に祭壇があり、座れる様に長椅子が置かれている。奥のステンドグラスがキラキラと光って綺麗だな。


「少し飾りっ気がありませんけど、それは神父さま達でお願いします。何か足りないものがありましたら言ってください」


「タクトくん、何から何まですまない。しかしこれもイリス様の為、色々とお願いすると思うが宜しくお願いする」


 神父さまとアポロンは町の教会から持って来た装飾品や祭壇画を取りに行くと出て行った。



「なぁ〜タクト、神父さま達出ていたけどよ。俺達はどうするよ」


「そりゃ〜教会に来たんだからお祈りしないと」


「ん?ん〜ま〜そうだな!せっかく来たんだし」


 イグニスは祭壇の前に片膝を突き手を組む。


「そう言えば俺が最初に祈って良いのか?神父さまに怒られないか?」


「大丈夫大丈夫、変なところ気にしないでさっさと祈りなよイグニス」


「タクト、なんか言い方冷たくないか!それにお前は祈らないのかよ?」


「ボクは後で祈るよ。それと一つアドバイスだ。イグニス、本気で祈れよ。今ならなんでも叶えてくれるぜ」


「はぁ〜どう言う意味だ?祈ると願いが叶うのか?それが本当なら俺は毎日祈りに来るぜ」


 イグニス冗談で言ってるんだろうけど、きっとそうなるよ。


「良いから早く祈ってやってくれ。待ち人来たるってな」


「はぁ?なんだそりゃ〜、ますます意味が分からん。

ま〜いっか、さっさと祈ってもう一杯やるとしますか」


…………▽


◆イグニスの視点


 なんかタクトにしてはやけに押しが強いな〜。祈るのが嫌なわけじゃないけど、今更だよな。俺は一度神を恨んだし裏切った男だぞ!神様だって俺の話なんて聞きたくないだろう。でもよ。もしも話を聞いてくれるなら、もしも俺の願いを聞いてくれるなら、もう一度、もう一度で良いからカミラの声を聞かせて欲しい。会わせて欲しい。抱き締めさせてくれ。


(一度で良いの?イグニス)



「へぇ?………!?」

 


 声がした。

 とっても綺麗な声で、そして懐かしい声が、

 俺は顔を上げると、そこには天使が居た。


「イグニスお待たせ!もう一度会えて嬉しいわ」


「カミラ……おれもだ、おれもおれも」




 カミラは俺を優しく抱き締め、

 俺は涙を流し強く彼女を抱き締め、

 決して離さないと誓った。


 これがこの教会の最初の奇跡。


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