第140話 新たな道具ドリル
「ジェーさん、ボクにアイツを殺らせてよ」
「あら!タクトちゃん随分と好戦的な顔してるじゃない。アイツ……殺れるの?メチャクチャ硬いわよ!」
「その辺は結構自信あるんで大丈夫ですよ」
走りながら俺の話をみんなが神妙な顔をしては見ている。
「そろそろ痺れを切らしたか、来るぞ!」
アポロンは殺気を感じ取りみんなに声をかけた。
「タクトちゃん!頼んだわよ」
「了解です!行ってきます!」
装備はヘルメット、手袋、ニッパーにハンマー、超攻撃装備、安全第一で始動だー!
魔物は一直線に俺達に向かって降りて来た。
ギリギリまで近づかせて『空間障壁』!魔物はぶつかり停止したところをハンマーで『空間圧縮』をしようとしたが、勘が鋭いのかすぐに飛び上がりハンマーが使えなかった。
「やるね!そうこなくっちゃ!さっきまでずっとみんなが戦っている姿を見ていて、ウズウズしてたんだよ!そんな簡単にやられてくれるなよ」
俺は空間障壁で足場を作り魔物に向かって飛び上がった。
アイツはジェーさんの剣を物ともしない頑丈さとさらに目で追うのがやっとなほどの速さ、それに加え空まで飛びやがる。万能性の高い魔物と言える。
隙を作らないとな!
俺はハンマーからプラスドライバーに持ち替え、ビスを連射で飛ばす。魔物は器用にもそのビスを躱し接近する。
「あの数を躱すとはやるね〜!」
魔物は俺の目の前まで来た瞬間、プラスドライバーからライトに持ち替え点灯、強烈な光を放つ!
魔物は眩しさのあまり動きを止める。
俺はその隙を突き横っ飛び、魔物の側面からニッパーで『空間切断』、血飛沫が飛び地面にゴトっと落ちた。
チッ……躱されたか!
コイツ反応良すぎだ!そう言うスキル持ちの魔物なのか?俺の攻撃に反応して回避しやがった。
………でも!
「流石に無傷とはいかないよな!」
魔物の右腕から大量に血が流れ、地面には魔物の腕が転がっていた。
「勝負あったかもな!そのままだと出血大量で死ぬだろ!逃げようとしても無駄、もうお前は俺の射程圏内なんだぜ!」
俺はライトからバーナーに持ち替え魔物に向ける。
魔物はこちらを見て、それから視線を下げ斬り落とされた右腕を見る。
「ばあぁぁ!」
魔物は気合を込めた雄叫びをあげると腕が一瞬で生えた。
「……………何も言えねぇ〜」
びっくりして何も言えねぇ〜が出てしまった。
と言うか卑怯だぞ!そんなのありかよ!よく言う超速再生かー!そんなのあったら本当に無敵だ!バカヤロー。
心の中で叫び、一度落ち着ける。
あれが無限に出来たらマジで倒せない。
それとも急所となる弱点でもあるのか?
分からん!こう言う時は!がむしゃらだ!
「バーナー放射!『空間延焼』」
魔物を中心とする十メートル四方が赤く光る。
そのまま燃え尽きろ!
「ボシュッ」
赤い光の空間から真っ黒な物体が飛び出して来た!
チッ、焼き切る前に逃げられた。
魔物は高速で飛行、皮膚が焼かれ焦げているがそれでも見る見る再生しているのが見える。無意味ではないと思いたいが倒し切るには物足りない。
「それじゃつ…ぎ……なんだ…これは?」
急に身体が震え足がおぼつかない。それに心臓の鼓動が速くなって苦しい。
「はぁ…はぁ…はぁ」
息が荒く目眩までしてきやがった。
俺の身体が上手く動かない。
そこを狙い魔物が襲って来る。
魔物は口大きくを開くと赤く光、一瞬にして巨大な火球を放つ!
やべー、空間障壁を張らないと、
俺は腕を必死に上げようとする。
間に合え〜!
「はいは〜い!カンナ登場!」
俺の前に颯爽と現れ、火球を一瞬で消し飛ばした。
「カンナ…サンキュー、今のは結構ヤバかった!」
「ええねん、相棒として役に立たんとあかんからな」
カンナのおかげで助かったのは良かったが、身体が思うように動かないのはマズ過ぎる。
「タクトちゃん、あれはもしかすると恐怖を相手に植え付けるスキルかもしれないわ!なんとかしてアイツの姿を見ないで、それと声も聞いちゃダメ!」
ボヤッとしてよく聞こえなかったけど、
ジェーさんが言っている意味はなんとか分かった。
だけどそれってかなりムズい!
「ライトやぁ!ライトの光を自分に当てるんや!闇属性のスキルならそれで消せるでぇ!」
そうか!試してみる価値はあるな!
ライトを光に切り替え自分に向けて点灯する。
「…………シャアー………復活!」
身体の震えが止まった。
これでまともに戦える。
さっきみたいな失態はもう犯さないぞ!
「相手の動きが速いからな。久しぶりにヘルメットの力を使うか!」
徐々に周りの動きが遅くなる。
目で追うのがやっとだったあの魔物も今なら余裕を持って回避出来る。だけど躱すだけでは倒すことは出来ない。
やってみるか!使いたかったが、怖くて使えなかった。ドリルを!
スキルの能力は『空間破砕』今までのスキルの中で最も破壊力がある危険な道具な気がした。
それでも頑丈なうえに再生能力まである敵だ!この力を使うには打ってつけな相手。
「行くぞ!ドリルよ!来い!」
俺の呼び声に応えたのだか、いつもと違う!今まではなんやかんやで、ほとんどが俺がよく知る道具の形をしていたが、今回は違った。
「何だこりゃ!?」
俺の右腕に巻き付く様に金属のプレートが浮かんでいる。
驚きはあったが、身につけた時点で、その道具の使い方が頭の中に入って来た。
だから………あとはこれを叩き込むだけだ!
『空間破砕』
腕を起点に金属のプレートが高速回転、さながら右腕は巨大なドリルと化し魔物を貫いた!