第136話 環境が人を育てる
「二人共前より格段強くなってない?どうしたの二人共」
「ふふ〜ん、そうでしょ〜もっと褒めていいのよ!タクト、私もいつまでも弱いままなんてイヤだったから父様と母様にお願いして前以上に厳しい修行を受けたのよ!おかげで戦うってことがよく理解出来たわ。あと母様が今まであれでも手加減してくれてたことも分かったわ」
ノルンは訓練を思い出してやや震えていた。
相当恐ろしい修行なのだろう。
「ノルンもかよ。俺もジャクソン村では役に立てなかったからな。親父にちっとしごいてもらった。俺も思ったが俺の親父も今まで大分手加減していたみたいだな。もしかしたら俺達の親は想像以上にすごい人達かもな」
アポロンの言葉に俺も激しく同意、父さんと母さんは間違いなく俺が思っている以上に強いと思う。
「あなた達、油断しているんじゃないわよ。あちらさんやる気満々みたいだわよ」
ジェーさんの言った先には筋骨隆々の鬼、ビックオーガが2体こちらを睨んでいた。
「おっしゃ!ちった〜マシなやつが来たな!」
「良いわね!あれくらい強そうな奴じゃないとやり甲斐ないもんね!」
二人共やる気満々だ。
前世の俺だったらあんなの出たら腰を抜かすか速攻で逃げるのに、この二人で全然気後れしていない。すごいな〜
二人共身体能力を強化すると、そのままオーガに向かって走って行った。
「あの二人の成長は目覚ましいわね。才能もそうだけど環境がそうさせるのね」
ジェーさんは随分と考え深いと言った表情をする。
「ジェーさんだってまだまだ強く慣れますよ。まだ二十代でしょ。まだいけますよ」
「あらやだ!励ましてくれるの?でもちょっと違うわね。私が思っていたのは別のことよ。羨ましいと思ったのよ。あなた達の親を見て、ワタシの親は結構クズだっから、親のせいだけにするつもりはないけれど、ワタシも影響されて大分クズだったからね。もっと早くあなた達に会いたかったわ」
「そう言って貰うと嬉しいです。過去は変えられませんけど、これからは変えられます。ジェーさんはまだ若いんですから取り戻しましょう人生を!」
「ん〜……なんかタクトちゃんと話していると年上みたいに感じるわね!ほんとにあなたは面白い子ね」
「ハハハ、どうも」
そりゃ〜………年上だからね!(前世を含めて)
二人は危なげないところはあったが、オーガの上位種ビッグオーガを倒した。ジェーさんが言うにはこれを単独で倒せると言うことは冒険者で言うところのBランク相当らしく、この歳でそこまでに至ると言うことは非常に稀なことだと二人を褒めていた。
「さて、そろそろ食事にしたいんだけど、安全そうな場所ってどこかあります?」
ジェーさんに質問をした時、ニキがぴょんっと頭の上にのり、パンパンっと叩く。
「どうしたニキ?なんかあったか?」
ニキは前足を左の方に向ける。
あ〜そっか、みんなの前だから喋れないのか!
でももう良いかな。俺もそれなりに目立ってしまったし、そろそろ解禁かな。
「ニキ、このメンバーなら喋っても良いぞ!」
「お!マジでかタクト、それなら面倒なのは抜きだ!さっきからへんなのがついて来るぞ」
なに!?
ニキが前足を指した方向を見たが特に何も見えない。
「あらあらこのワンちゃん喋れるのね!かわいいわ〜ん!それにとってもお利口さん」
ジェーさんは剣を引き抜く。
「ジェーさん何かいるんですか?」
「あらあらタクトちゃんはニブちんね!十人は居るわよ!」
アポロンもノルンもジーっとそちらに目を向けているが見えてはいなさそう。ジェーさんとニキには何が分かったんだ?
「隠れてないで出て来て良いわよ!」
「…………………」
シーっとして何の反応もない。
「あら〜……出て来ないつもりかしら?ま〜良いわ!それなら力尽くで行きましょうか」
「まー待て!今出るよ!」
暗がりの場所から人影が現れる。
さっきまで確かに見ていたのにまるで分からなかった!
「見つかったからには手は出さない!誓うよ!ドラゴンバスター相手に真正面からやり合おうなんて無謀だからな」
黒い色の服と軽装の鎧をつけた男は手を上げ降参の姿勢をとった。
「あら、私達を暗殺して身ぐるみ取ろうとでもしてたのかしら、それなら逃がすのはちょっと無理よ」
「いやいや、待ってくれよ!確かに俺達はあんたらを襲おうとしたが、見つかった以上手は出さない。それにいくらあんたでも、本気で逃げる俺達は捕まえられないと思うぜ!止めとけよ」
男は自信があるようでニタリと笑い。見えないが周りからも笑い声が聞こえる。
「あなた達、どうやら高いレベルの隠密スキルと何か魔道具を使っているようだけど、過剰な自信は身を滅ぼすわよ!ね〜タクトくん」
「なんでボクに振るんですか!?」
いきなりだったのでビクッとしてしまう。
しかし、ジェーさんの目は本気だ!俺になんとかしろと………分かりましたよ!考えますよ!
「なーなーウチもまぜてぇ〜な!」
「はぁー!……遊んでるんじゃないぞカンナ」
「ウチ役に立てるでぇ〜、何がしたいか言うてみ〜」
「う〜分かったよ!それじゃ〜あの男の仲間がどこかに潜んでいる。そいつらがどこに居るかを教えてくれ!」
「えっと!あそことあそことあそことあそことあそことあそことあそことあそことあそことあそことあそことあそことあそこ………………………」
「ちょっ…ストップ!待て待て、なんで分かるんだよ!それに多くないか?テキトウに言ってないだろうな」
「なんやねん!教えてあげてるのにいちゃもん言うか!ウチは嘘ついとらへんでぇ!」
「別に嘘ついてるとは思わないけど、なんで分かるのかな〜……」
「ウチは空間把握が得意なんや!せやから目~瞑っとっても大体のことは分かるんや!」
「なるほど、でもそれならさっき道に迷った時は……」
「せや!なんで行き止まりの方に歩いて行くんやと、腹の中でわろてもうたわ!」
「アホか!言えよ!」
「あ!いた〜……も〜う叩かんといてぇ〜な!」
「やかましいわ!反省せい!たくぅ〜しょうがない奴だな〜、それで何人で位置は全部分からんだな!」
「もちろん分かるでぇー」
「それなら良い!行くぞカンナ!」
「はいな!いてもうたるでぇー」
プラスドライバーから放つビスの乱れ打ち!
カンナの指示で俺はビスを打つ!壁や地面に張り付いて隠れている奴らを根こそぎ捕まえる。
「動けないぞ!何をしやがった!」
そこら中からワーワーと怒鳴り声が聞こえる。でもそんなの無視だね!さっきまでの話を聞く限り同情は要らない。死ねばいい。
俺達はその場を去りダンジョンの下層を目指す。
そして俺達を襲った男達は動くことが出来ず、集まって来る魔物共の餌食となるだろう。
自業自得だ!