第128話 安全安心を求めて
「こりゃ〜本格的ヤバいな、バロン」
「予想はしていたが、あそこまでの規模で追ってくるとは、ボルジア公爵が指示を出しているなら当然かもしれんが、タクトくんのおかげで逃走するのは案外容易ではあるが、このまま追われ続ければ、こちらもいずれ疲弊する。あまりよくない状況だな」
イグニスとバロン様の言っていることは最もだな。常に警戒しながら移動するのが、こんなにつらいとは、みんな疲れた表情をしている。ただ母さんは相当タフだ。ずっとニコニコしていつも通り。本当に何者なんだろう?あれからずっと気になってしょうがない。
「はぁ〜もう疲れた。そろそろ休みませんか?」
結局俺が一番貧弱だった様で休むことを進言し、地面に腰を下ろした。
「も〜う、タクトちゃんそんなんじゃ強くなれないわよ!ほら立って立って」
え〜ジェーさんには勝ってますけど〜………とは言いません〜。身体は子供、頭を大人、空気読めるんです!
「分かりましたよ!ジェーさんは厳しいな〜仕方ない。地の精霊さん助けて欲しんだけど、良いかな?……うん、あ、それね!……OKOK」
交渉成立、地の精霊の力を使い地面をオートウォークを再現、これで楽ちん楽ちん。ちなみに交渉については以前地の精霊と仲良くなるためにタブレットから肥料を購入して与えたら大喜び、それ以来よく与えているのだが、何故かどこの土地に行っても求められる。どこ情報よ!
「タクトちゃん、私が言いたい意味と違うのだけど」
「ま〜ま〜ジェーさん、言いたいことは分かってますから、取り敢えず休まないで行けるところまで行きましょう」
しかし、この後地の精霊が扱えると口外していなかったのでみんなから質問攻めされた。うっかりうっかり。
「な〜な〜コーラ飲みたいや!買ぉてええ?」
「あぁ、良いけど飲みすぎるなよ!カンナ」
「このシュワシュワがたまらんのや!」
カンナはクビクビとコーラを飲む。
カンナは甘い飲み物が大好きここ最近この会話が当たり前になった。ついでに二人の食いしん坊も便乗して要求してくるのはちょっとウザい。
「ねぇ〜私にも頂戴、この間のフルーツ牛乳が良い」
「うん、良いよ!はいどうぞ」
ノルンはフルーツ牛乳を受け取ると、口をつけ、
「あまウマ!」と言って笑顔になる。
「それ美味しいよね!ボクも好きなんだ。疲れた時に特に美味しく感じるんだよね!」
「……うん、本当だね!私達いつまで逃げないといけないのかな!」
きっとほんの少し気が緩んだのかもしれない。ノルンの本音が漏れる。
「あ!違うの!今の旅も楽しんだけど、ちょっと疲れたみたいな……」
ノルンは手を振ってバタバタと慌ててフォローにはいる。しかしそれがよりショックだった。なんで気が付かなかったんだ。きっとノルンだげじゃない。みんなも疲れてるし辛いはずだ!だけどみんなは優しいから言わないだけ、俺はバカだった。
「あの〜タクト?どうしたの?」
ノルンが心配そうに俺の顔を覗き込む。
俺はどうすれば良い。考えるんだ!ノルンやみんなと平穏な生活を送る方法を!
「なぁ〜なぁ〜困ったんやろ!ウチたよりーな!」
腕を後ろに組んで笑顔でノルンの様に下から俺の顔を覗き込む。随分とあざとい技を覚えよってからに……可愛いじゃないか。
「そうだな。相棒だもんな!カンナ…アイデアをくれないか?ボク達は追われてるだろ。流石に少しつかれたんだ。一息つきたい。何か良い方法はないかな?」
「う〜ん……そやね!…………ウチの腹の中に入るってのはどやろうか?」
「???……へぇ?」
カンナさん、お腹の中に人は入れないよ!
「カンナ、ボク達を食べるつもりかい?」
「なわけあらへんやろ!ええか今のは例えや!ウチの腹は異空間に繋がっとんやで、そこに逃げ込んだら誰も入れんのや、それなら安心安全やろ」
「本当にそんなこと出来るのか?異空間…………つまり別の空間、確かにそれなら誰も来れないだろうけどさ〜、そこってそもそも人って住めるのか?」
「ん?………そら〜分からんな〜行ってみんと、ほな〜行ってみまひょか」
「えっ!?」驚く俺を他所にカンナは俺の手を取り飛んだ!
………なんてことでしょ、ここに小さな宇宙があった。どこまでも続くその空間は全てを飲み込み、そして新たな生命を生み出すのだ………
「てぇ!なんか感傷浸っとたわ!何だよここは」
「ここがウチ専用の異空間やで、ちょ暗いやんね!照明つけましょか!スイッチOnやで!」
突如宇宙空間に光が注ぐ、太陽と少し違った全体的な優しい光がこの世界を照らす。
「すげぇーな〜そんなことが出来るのか、でも何にもないけど、ここに住むのか?」
「う〜んそやね。ここままやと無理やんな」
「そうだな。そもそも地面もないし、ふわふわ浮いてる訳にもいかないぞ。寝る分には良いかもだけど」
「うん!そっか地面やなちょ待っときー」
カンナが消え数分後……
突如数百メートル四方の大地が現れる。
「持って来たでぇー地面」
「カンナ、どっこかからくり抜いて来たのか?」
「ま〜そやねぇ!」
「ん〜確かに地面は出来たけど……」
俺はカンナが持って来た大地に降り立ち、膝をつき地面に触れた。
あちゃ〜……突然連れて来られたから地の精霊さん怒ってるよ!こりゃまずい。
俺はあ〜だこ〜だとなだめる。そして最後の一押しと肥料を渡したらなんとか落ち着いてくれた。でも正直肥料を渡しておけばオールOKだったかもしれない。
「カンナ〜良くこんな物を持ってこれたな。それで、地面が出来たからここに住めると?これだけだとちょっと無理だよな」
「確かに……せやけどこれを見よ!」
カンナは俺にタブレットを見せる。
「なるほど、その手があったか!?でも前見た時は家なんてなかったぞ!」
「そらレベルアップしたからやで!タブレットが能力アップして購入出来る商品が増えたんや!」
まさかここまでとはな。希望が見えてきたかも。
「ナイスカンナ!これは行けるぞ!ここはボク達の安住の地なるかもしれない!」