第127話 国王軍からの逃亡
「あ〜もう、ウザい!」
空を覆う様にな数の火の矢が降り注ぎ、それを空間障壁を展開し防ぐ。俺達は国王軍に追われていた。
ジャクソン村を出て数日後のこと、次の町に行く山道で待ち伏せしていた国王軍に突如襲われる。相手は完全武装、明らかに俺達を狙って来ていた。どうやって俺達がここに通ると分かったのかは不明だけど恐らくは何らかのスキルを使ったと推測が出来た。
『ファイアウォール』
『アースウォール』
イグニスとローム先生が火と土の壁を作り国王軍の追手を止めるが、流石は国王軍、優秀な魔法士が居るようだ。すぐに魔法を対処し追って来る。
しかし面倒くさい。こちらから攻撃が出来ない。いや、正確には抑制しているのだが、何故攻撃を抑えているのかと言うと、ここに居る大半以上の者はただ命令されて俺達を攻撃しているだけだから。もちろん攻撃する以上攻撃される覚悟はしてもらうが、それでもこの人達は決して悪意を持って追って来ているわけではない。問題は命令を出していると思われるボルジア公爵、だから国王軍に出来るだけ攻撃を加えず逃げていた。
「まずいな!誘導されている。このままだと逃げ場を失うぞ」
「あ〜その様だな。すでに両側には馬に乗った騎士の部隊が居るぜ。前方も抑えられたな」
バロン様とイグニスは逃げるのをやめて、足を止める。それを見た俺達も足を止めた。
周りを囲まれ逃れる状態ではない。
もう覚悟を決めて攻撃をしなければならないかも知れない。
魔導ショップのおっさんがガクガクと震えている。だからついて来なければ良かったのに〜と思っていると、そっと奥さんのエルシーさんが支える。意外だ!?てっきりバチンっと叩かれるかと思ったけど、ちゃんと夫婦やってるんですね。
「観念するのだな族共、お前達に逃げ場などない!」
周りの兵士を押し退け現れたのは黒馬に乗ったなんちゃってラ◯ウ、その男と馬は普通よりふた周りはデカく、そして強い威圧感を放っていた。
「面倒くさいのが来たものだ。ラゴゥとは」
バロン様が憂鬱そうにため息をつく。
「バロン、まさかお前がやらかすとは思ってなかったが、今度こそ決着を着けようじゃないか」
ブンっと馬を斬り裂く程大きな大剣を振る。そしてそれはバロン様へと向けられた。
「勝負ですか?もう何度目です。決着などとうについています。ラゴゥ、あなたは私より弱かった」
「うるせぇー、あの時は……調子が悪かったんだよ」
「毎度ですかね〜」
なんか二人で盛り上がっているが、このラゴゥと言う男、かなり強そうだがおつむの方はイマイチの様、これなら油断が突けるかも。
俺はこっそりとイグニスとローム先生にお願いをした。
「フン!口ではなんとでも言えるわ!尋常に勝負だ!」
「尋常に勝負って、せめて周りの兵士は止めたらどうなんだ」
「うるさいは!お前のような悪党にはこれで十分よ〜」
「言葉の使い方間違ってるぞ!その言い方なら手を抜いたらどうなんだ」
呆れ果てるバロン様、きっとこの人と話をするといつもこんな感じなんだろうな〜と見透かせれる。
「あの〜一つ質問いいですか〜!」
俺はビシッと子供らしく手を挙げて質問した。
「なんでこんなところに子供が居る。良いか!ここは危ないんだから来ちゃダメだぞ!」
「あ!そうなんですか、すいません」
実は別に悪い人ではないかも、アホだけど……
「聞きたいことなんですけど、皆さんは誰を捉えに来られたのですか?」
「質問を許可した覚えはないぞ!しかしま〜良かろう。罪人はしっかりと自覚をもってもらわんとな!では教えてやる。我々の任務はそこにいるバロンと勇者イグニス、それと何故かは知らんがタクトと言う子供を連れて来いとのことだ、それ以外はどうでも良い。邪魔なのでどっかへ行け」
シッシッと手を振りどこかに行くように促すがもちろん誰も動こうとはしなかった。
「取り敢えずは、だいたい想定通り」
ヤツのの狙いはやはり俺だろう。まったく裏ではあのアトラスと言う子供が動いているのだろう。腹が立つね!
「それじゃ〜そろそろ行きますかね!先生、イグニス宜しく!」
『ファイアウォール』
『アースウォール』
俺たちの周りに数メートルの高さに伸びた火と土壁が出来る。
「往生際が悪い!お前達は逃げられないのだ!魔法部隊!壁を破壊しろ」
360度!全方位からの魔法攻撃により火と土の壁は僅かな時間で破壊される。
しかし………
「な!?な!?なーー!?どこへ行ったのだ。アイツらは!」
壁を破壊した先には誰も居なくなっていた。バロン達は忽然と姿を消したのだ!
「あ!あ!あり得ん、そうか地面から逃げたやも知れん、魔法部隊地面を掘り起こすのだ!」
それから兵士達も使い、地面を掘り起こしたが何も出てこず、体力ばかりを失った。ガクッ!
…………▽
その頃俺達は……数分前の居た山道から約10キロ離れた森の中に居た。
「タクトくんには本当に驚かされる」
「まったくだ!まさか転移魔法まで使えるとはな」
バロン様とイグニスが関心している。
そんな風に言われるとテレるけど、実はぶっつけ本番だったんだけどね!上手くいって良かった。
「おいおい坊主!それすげぇ〜な!その包みたいな道具見せてくれよ」
魔導ショップおっさんだけある。こう言う物には興味津々かよ。
「おっさん悪いんだけど、この道具はボクのスキルだから渡せないんだよ」
「えー……なんだよ!ガッカリだぜ!でもま〜面白い物を見せてもらったぜ。いつか同じ物を作ってみたいぜ」
おっさんはガッカリしたあとに勝手にワクワクし始めている。おっさんは意外と感情が豊かである。
しかし上手く行って良かったよ。あの後壁で王国軍の視界を遮った後、配管を使った。でもその際に懸念事項が二つあった。一つは魔力、以前の話だと魔力量が足りず、人が通れるだけの配管サイズを作ることが出来なかった。しかしレベルアップとイリスがくれた宝魔の薬のおかげで魔力が急上昇、配管サイズを人が通れるまでにすることが出来た。そしてもう一つは時間だ。いくら魔力が上がってもある程度の時間が必要だった。これに関しては先生とイグニスに感謝だ。かなり丈夫な壁を作ってくれた。
「確かに凄かったが、あんまり入りたくはないな。暗いんだよ」
確かにアポロンの言う通りだと思う。
配管に魔力を注ぐと配管が地面から生えて来た。正直かなりびっくりした。それにパッと見はどこぞの兄弟が入って行く物に良く似ている。
ドゥ!ドゥ!ドゥ!ってな!
しかし現実は違う。真っ暗の中に落下するのだ。これはかなり怖かった。
ま〜しばらくすれば慣れるだろう。
こうして国王軍からの魔の手から逃れることが出来たが、同時に俺達は追われる身となったことが確定した。こんなの平穏な生活じゃな〜い!