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第123話 戦いの裏で起きていた大事件


◆バロン男爵の視点


「王都で反乱が起きた」


「そうですか、本当に起こすとはなボルジア公爵、そこまでして国が欲しいか」


「こらこら、簡単にその名を出すでないわ。これは極秘事項であるぞ。それに今のところ裏で動いているだけで表だった動きではない。動くのは恐らくこれから、ヤツはハドリアヌス国王を引きずり下ろすつもりだ」


「それでは王都での反乱とは?」


「反乱を起こしたのは王都の住民だ。城に向かい攻めて来おったわ!」


「ちょっと待ってください!そんなことありえない。ただの住民が城を攻めるなんて無謀にも程がある」


「確かに、私も最初は耳を疑った。しかしこれは事実だ。実際かなり危なかった。城にまで侵入されたそうだ」


「何をやっているんだ。王国軍の兵士は、その程度のことも出来ないのか!」


「その程度、確かにのう、その中には腕利きの冒険者が混じっていたとは言え、こちらは日頃から訓練を受けている兵士、いくらなんでも失態と思われても仕方があるまい。しかし王都の住民の約5分の1、10万人が攻めて来たとなればどうであろう。数の力とは恐ろしいな。ゆえに国民の支持を失うことは国を滅ぼすことにも直結しかねん」


「10万人ですって!?ありえない」

 私はあまりのことに驚きを隠せなかった。これ程の規模、これはすでに戦争だ。何故これ程の怒りを王国は住民から買ってしまったのか……


「それで王国の状況はどうなのですか?」


「今は鎮圧され落ち着いておるが、死傷者は数万人にも及ぶ、拘束された者もそのままにはしておけんが人数が多すぎる。実際現場だけでは対処が出来ず、各方面の貴族に伝令が飛んでおる。人員をよこせとな」


「一段落していないわけですね。でも問題は更に続くですか」


「そうだ、困ったものだ。今回のことを受けて他の住民にも不信感、不満などが植え付けられたであろう。そこにどうボルジア公爵がからんで来るつもりか分からんが、今の王政は内と外同時に攻められていると言うことだ。これは早急に正しい対処をせねば国は滅びかねん」


 私の町でこのような惨劇が起きている間にまさか王都でも……そうか!だからシャックス侯爵はこのタイミングで攻めて来たのか、恐らくシャックス侯爵もボルジア公爵と繋がっている。


「ローラン卿、恐らくシャックス侯爵も……」


「うむ!間違いないであろう。あやつは黒い噂の絶えない男、こちらも諜報員に探らせておったが間違いなく、ボルジア公爵と共にこの国を狙っておった。だから助かったぞ!火の勇者イグニスよ!お前がシャックス侯爵を討ったと聞いたときには」


 いきなり自分の名前が出たのでびっくりするイグニス、そしてかなりの不満顔に変わる」


「どうも、お久しぶりで御座います。ローラン卿それは何かの間違いです!私はシャックス侯爵を倒してはおりません。それどころ…うご!」

 

 私はイグニスの口を塞ぐ。


「ウゴゴ……何するんだよ!バロン」

「良いか!余計なことを言おうとするな!面倒事が増える」

「何でだよ!俺はそれだけのことをやったんだ!裁かれないといけないなら、受けるべきだ!」

「タクトくんと話をしたんだろ。お前がやることは牢屋に入ることじゃない。罪を償い方は人それぞれだ!お前がやれることをやれ」


「何だ?儂には話せない話か?コソコソしおって」

 あ!しまったイグニスを咄嗟に止めるのでローラン卿のこと忘れてた。


「いや、そう言うわけではなくてですね〜」

 おっと動揺してしまったが、ここは落ち着かねば。


「ま〜良い。シャックス侯爵の勢力を失ったことはボルジア公爵の動きを鈍らせるであろう。私もこの後王都へ向うつもりだが、王政そしてこの国は大きく動く、バロンお前にも力を借りたいが今はその時ではないな。もしもの時は頼むぞ!」


「はぁ!謹んでお受けします。必ずやローラン卿にお受けした恩を返させて頂きます」


「ふん、恩か……それは私の方の気もするが助かる。それでは私はそろそろ行かせてもらおう。住民の件はヴァルトに伝えておくから安心せよ!それではな!」


 ローラン卿はその後すぐに行ってしまった。あの方は本当に私を心配してくれたようだ。まったくあなたの様な上位の階級の方が私の様な者にまで……嬉しいことだ。そしてローラン卿の期待に応えたい。そろそろ私もわがままばかり言ってはおれないか、私も覚悟をしよう。大切な者達を失わないために……


………▽


 それからジャクソン村に向かった。

 村では住民達がなんとか暮らせていた。決してこれだけの人達を受け入れる余裕などないのに、惜しみなく食料や寝床を用意してくれたようだ。


「おう!戻ったかバロン」


「セルギウス戻ったよ!済まないな。私のわがままで世話をかけた」


「そんなことはいい!それよりもノルンちゃんは………無事の様だな」

 セルギウス神父は後ろからタクトくんと楽しそうに歩いて来るノルンを見て安心したようだ。


「あ〜タクトくんに助けられたよ。お前も言っていた通りだよ!彼には神が付いているのかもな。だが彼がすごくなるのは昔から分かっていたがな!」


「何に張り合ってるんじゃ、まったく、そんな減らず口が言えるなら本当に安心したよ!」


「その通りだ。それで……見る限りは住民には問題はなさそうだが、随分と手厚く迎えてくれたようだな。正直これだけの人達を受け入れてくれと言えばイヤな顔ひとつやふたつされただろう」


「いや、それがそうでもないんだ」

 

 セルギウス神父の言っている意味が分からん。数百人の住民だぞ!このままであれば食料もすぐにそこをついてしまうはず。どんな人間でも自分達の命が最も大切なはず、ここまで協力的とは一体?


「報告しただろ。以前この村で石化した住民が続出した話をさ」


「あ〜つい最近の話だよな。確かにお前がこの町の住人の治療を……」


「いや、実は未確認だったのとタクトくんがあまり口外してほしくなさそうだったので言わなかったが、石化を発生させた魔物を退治して石化を解いたのはタクトくんだ」


「なるほど言いたいことが分かったよ!またタクトくんに救われたな」

 どうもここの村人はその件の恩返しがしたくて協力的なのだな。


「それじゃ〜村長と話をしたい。村長のいる場所に連れて行ってくれ」


「おう!この後の話も聞かせてくれるんだな!」


「あ〜色々と考えた。これからの俺達について決断する時が来た。みんなからは批判されるだろうがな」


「気にすんな!俺がついている!」

 セルギウスは私に肩を組んできた。

 暑苦しいヤツだ!昔から変わらない。


「フッ…まったくありがとうよ!友よ!」


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