第122話 ローラン卿が現る
「ん〜うまいうまい…」
みんなで朝食を食べていた。
今日のご飯はパンと目玉焼きにソーセージ、パンは食パンにと◯けるチーズをかけて食べており、みんなでビヨーっと伸ばしている姿はなかなかシュールで笑える。
「バロン様、昨日は聞けなかったですけど、他の町の人達はどこに行ったのですか?」
ここに来て今のところバロン様達しか見ていない。確かに二、三百人は居たはずたけど。
「彼らにはジャクソン村に向かってもらった。ここに居るとまた何が起こるか分からないからね。念の為の処置だ。警備隊に先導させているから魔物が出ても無事に村に着いているはずだよ」
「そうですか、それは良かった。それでこの後はどうされるおつもりですか?」
「それについてはあれからずっと考えてはいた。タクトくんがノルンを救出してくれた。だけどそのことで間違いなくシャックス侯爵の怒りを買ったはず、ここにはもう居られない。我々はここを出ようと思う」
あ!そっか昨日はシャックス侯爵達の件を一切話していなかった。まずは其辺の共有をしておかないと。
「あの〜だぶんシャックス侯爵に関しては大丈夫かと思いますよ!」
「ん?何故だいタクトくん、教えてくれるかな?」
「実はですね。ノルンを救出する際に………」
それから出来る限り起った出来事を説明をした。
「…………ん〜そうか、……想像以上だよ。流石はブラックとミルキーさんの息子さんだよ。私の目も曇ってはいなかったようだ」
何故かすごく納得させたのは良いけど、正直ものすごい違和感を感じた。俺はただの子供なのに何で信じられるんだ。
「まったくだぜ!俺もぶった切られた。あの時は焦った〜」
「イグニスは油断し過ぎなんだよ!勇者だろ!」
「何度も言ってるだろ!俺は勇者じゃねぇ〜」
バロン様とイグニスが言い合いをしている。悪い意味じゃない。バロン様はからかっているだけだ。
「タクトくんはすごいな!イグニスを倒し、ゴエティアの王の一人を倒した。これはまた違った意味で問題かも知れん」
バロン様はとても難しい顔をされている。
「問題?何か問題があります」
「大アリだよ!タクトくん、この情報がどこまで伝わるか分からないが、間違いなくゴエティアの王達の耳には入るだろう。そうなれば彼らが君を放って置くわけがない。これから君は追われる立場になってしまう」
「ま〜それは仕方ないですね。アイツらはボクの平穏な時間を邪魔してばかりです。この際、こちらからぶっ潰しに行こうか考えていたところです。ちょうど良いですね」
「タクトくん、君はいったい………」
あ!やべ!ついつい本音が出てしまった。しかしもう隠すつもりはさほどない。この際言いたいことは言ってしまうか。
「ボクを邪魔するヤツをぶっ倒します!悪魔だろうが貴族だろうが関係ない!オレの平穏はオレが守る!」
「クッハッハッハ、タクトくんは面白いな!良いよ。すごく良いと思う。私は君を応援するよ!」
バロン様は大笑い、イグニスみたいなテンションでバンバンと肩を叩かれた。
「さて、タクトくんの話は分かった。それを聞いて是非言っておきたいことがある。
タクトくん!私は君を守ろう。私や娘を守ってくれた。この大恩は必ず返す。ここに一人の騎士として私は誓う!」
「バロン様、そこまで言って頂いて恐縮です。自分でやれることはやるんで、もしもの時は力を貸して下さい」
俺はバロン様と握手をして互いの意を汲み取った。
朝食を済ませた俺達は一度ジャクソン村に向かった町の住人と合流するために町を出ようとしたところだった。数人騎士者達が現れる。
「待たれよ!バロン男爵」
騎士の一人が前に立ち塞がる。
何者だ。騎士と言うことはどこかしらの貴族が関係している。もしかしてシャックス侯爵か?しまったな〜結局バラバラにして置いてきちゃったからな。
バロン様はその騎士の下に向かう。
「あなた方はセドリック様の騎士とお見受けする。なに用で来られた」
そこに馬に乗った一人の男がやって来て、その姿を見たバロン様は膝をつきかしずく。
「まさか!?ローラン卿まで来られていたとは一体どの様なご要件でしょうか?」
「何を言っているか!お前のことが心配で馬を走らせて来た。無事で良かったわ!」
「その様な勿体ないお言葉……ありがとうございますローラン卿」
「うむ!しかし手ひどくやられたようだな」
ローランは周りの町の様子を見て言った。
ローラン自身、これほど酷い状況とは思っていなかった。それ故に急ぎ来た甲斐があったと感じていた。
「バロンよ!少し話がしたい。良いか?」
「はぁ!問題御座いません」
「うむ!シャックスめ!このような酷いことを、町の住民はどうした。ここにはおらんのか」
「はい、今は近くの村へ逃がしております。ここは人が住むには衣食住全てを足りませんので、とは言っても、ジャクソン村だけに頼るのは困難ですので、失礼ながらローラン卿にお願いが御座います。どうか町の住民をマルクトで移住させて頂きたい」
「バロン頼ってくれて嬉しいぞ。それはもちろん構わん。ヴァルトに言っておこう。あいつが断ることはあるまい。それよりもお前はどうする。今の言い方からするとお前は来ないつもりであろう」
「ええ…そうですね。どんな形であれ上位の貴族に逆らったのです。このまま何もないと言うことはないでしょう。それに今回狙われたのは娘のノルンです。私としては許してはおけませんな」
バロン様からふつふつと怒りの気配を感じる。
「それは当然のことであろうな。私とて息子や孫達に手をだされればただでは済まさん!しかしバロンよ!それよりもまずは娘を守ることが重要なのではないのか?それではあればマルクトの我が屋敷で匿おう。それがより安全ではないか?」
「確かに……その通りではありますが、止めておこうと思います。今は留まるよりも走り出したい気分なんですよ!」
ローランは額に当てる。
「そうだったな。お前はそう言うヤツであった。いつまで経っても男爵のままだしのう〜。散々推薦してやったと言うのに」
「すいません、私は堅苦しいのは嫌いでしたね。貴族にもなりたくはありませんでした」
「分かった。それではもう一つ話しておきたい事がある。以前話をしたが王都で反乱が起きた」




