第121話 イグニスの進むべき道
「うんめぇー!なんだよこれ最高じゃねぇーか」
「とても美しい色だ。それにこの芳醇な香り、飲んだ瞬間鼻を抜けて脳を刺激する。はぁ〜幸せだ!」
二人共満足してくれたようだ。
イグニスはスーパードラ◯のビールを片手にグビグビ、バロン様は高級ワインシャ◯マ◯ゴーの香りを楽しみながらゆっくりと飲むのを楽しんでいた。
あれからバロン様とイグニスがどの様に話が落ち着いたかは分からないけど。取り敢えずは話がついた様だ。
今は食事中、俺は夕飯を適当なレトルトで終わられようかと思ったけど、母さんが料理を作りたいと言ったので、それなりの手間がかかる料理を作ることになった。
それは良かったけど、少し驚かされた。今となりでノルンとスカーレット様が野菜をきざんでいる。この二人まったく料理をしないと思っていたけど、思いの外上手だった!意外だ!
今日は屋外なのでバーベキューにした。
折りたたみ式BBQコンロを広げて少しお高めの肉を焼く。ちなみにこの辺の物はタブレットから発注をかけた。
「バロン様、イグニスもうそろそろ焼きますよ〜」
「お!本当だ!美味そうな匂いがしてきた」
「うむ!甘い脂の匂いを感じますね」
あ!忘れてた。タレタレ
二人がそのまま肉を食べようとしたので、二人に皿を渡し、そこに黄◯の焼き肉のタレを入れる。
「あ?何だこれ」
「う〜んそうでね〜タレでしょうか?」
二人は疑問に思い皿に肉を置かない。
「バロン様正解です。それ肉用のつけダレで塩で食べるのも良いですけど、これも美味しいんですよ。ささぁ!食べてみて下さい」
イグニスは特に気にせずタレをつけるとガブッと豪快に肉を噛みしめる。
「う〜うまぁ!これ美味いな〜、しかもビールと良く合うぜ!こりゃ〜とまらねぇ〜!」
肉を次々と口に入れグビグビとビールを飲む。このままだとビールは全然足りないな。取り敢えずもう1ケースは出しておくか。
「タクトくん、今更だけど、このワインや肉どれも食べたことがない。これほど美味しい物は上流貴族のパーティーで食べたことはない。一体どこからこんな物を」
「ま〜ま〜良いじゃないですか、今は食べましょう。まだまだいっぱいありますよ!」
バロン様はあまりにも美味しかったようで、気になって仕方なさそうだったけど、今は楽しもう。やっと平穏な時間を手に入れたのだから。
それから母さん達に頼んで作ってもらった。料理がテーブルに並ぶ。野菜のスライス、ワカメスープ、小松菜のナムルベーコンの串焼き、ピーマンのチーズ詰め。母さん達も見たことのない食材が多くあったけど、作り方を教えたら問題なく作ってくれた。
久しぶりに食事をしながらみんなで楽しむことが出来た。
その日は食事を終えると疲れていたこともあり、みんなすぐに寝ることになった。
「タクト、タクト、起きてや!」
「うっ……どうした?……まだ夜だぞカンナ」
俺は目をこすりながら起きる。
「タクト大変なんや!」
「ん!どうした非常事態か!」
カンナがすごく慌てている。一体何があった。
「なんや、お腹のあたりが変なんや、助けてくれ〜」
「そ、そうか心配だな!どんな感じだ?痛いのか?」
「ん〜なんや、下腹部が張って様な感じや!」
股をモジモジさせてお腹付近を押さえる。まさか!?
「カンナちょっと来い」
俺はカンナの手を引き、草むらの中に移動する。
「カンナ良いか、まずは力を抜いて腰を下ろせ」
「こ、こうか?」
「そうだ良いぞ!後はだな…………」
しばらくゴソゴソとしてから……
「それじゃ〜行くぞ!……ふっ」!
「あ!なんなこれ…あ!すご!……はう〜………」
それから少し経ち……
「はぁ〜スッキリしたでぇー、こりゃ〜たまらん」
カンナは光悦して赤い表情になっている。
言っておくが俺は変なことは一切していない。
そのことだけはみんなに伝えておこう。
カンナは今まで食べたり飲んだりと食事をしなかった。今まではそれで良かったが、今回はみんなが楽しそうに食事をしていた姿を見て食事がしたいと言ったので食べさせたのだが、そうか〜食べれば出る。当たり前だ。……あれ?待てよ。と言うことは小だげじゃない!次は大か!?
………ちゃんと一人で出来るように教えよう。
何にしてもスッキリしたカンナを連れて寝床に戻る途中一人の男に会った。
「あれ?もしかしてまだ起きてたんですか?」
「おう!気分が良くてな。実はさっきまでバロンと飲んでたよ」
イグニスはビールを片手に空を見ながら飲んでいたようだ。
「なぁ〜聞いていいか?」
「うん?何かありましたか?」
「何でお前もバロンもそんなに優しくしてくれるんだよ。正直俺はどうしていいか分からなくてよ〜」
「あ〜そう言うことね。罪悪感に潰されそうなんだ。ん〜自分は前に少し言ったけど、イグニスを許した覚えはないよ!だけど俺はイグニスをただ殺せば良いとは思えなかったし死んで欲しくないと思ったんだよ。バロン様に関してはボクじゃ分からないけど、多分信じていたんじゃないかな〜イグニスが過ちを犯しても、ちゃんと立ち直れるってさ!ま〜ボクの勘だけど」
「たくっどいつもこいつも甘いヤツばっかりだ。俺は本当に人に恵まれたんだな。神様に感謝だな」
「うん!ボクもそう思うよ!今度お礼を言っておくね」
「………あ〜頼んだ!タクト」
その日イグニスは明け方まで飲んで、自分の進むべき道を模索していた。




