第117話 現れる化物?
「これはヤバいな!かなりの数だ。バーナーで焼くか?」
俺達が町を出るとすぐに魔物の集団に遭遇、パッと見で百体以上の魔物、本隊ではないがかなりの迫力、俺はバーナーを魔物に向ける。
「ゴオオオオオ」
凄まじい熱が魔物を襲う。しかし俺はまだバーナーを使っていない。これは……
焼け焦げ倒れる魔物の前に降り立ったのは火の勇者イグニス。
「よぉ!お疲れさん……やったのか?」
なんとなく気まずそうな顔をするイグニス。
「うん!やったよ!イグニス、九王の一人を倒した」
一瞬目を大きくして驚いた表情に変わると、いきなり抱きついて来た。
「やったじゃねぇ〜か!お前ならやれると思ってたぜ!タクト〜お前は最高だ!」
めちゃくちゃ喜んでくれた。
「ま〜ね!それよりイグニスがコイツラを倒してくれたのか?正直すごい数を相手にしないといけないって聞いてたからさ。今日はもうクタクタだったから助かるよ!」
よく見ると魔物は今の奴らだけじゃない。奥の方にもたくさん倒されているのが見えた。
「いや、あれは違うぞ。俺が殺ったのは町の周辺まで来た魔物だけだ。あれは別のヤツが殺った。集団の本隊はまだこの奥だ!」
はぁ〜やっぱり戦わないとダメか!
それにしても少し奥で倒れている魔物は誰が殺ったんだ?町の衛兵か?
俺達は町の外に出たあと森の中に入り魔物の集団とゴエティアのメンバーを探す。
森の中には多数の魔物が切り刻まれて倒されていた。イグニスには聞いたけど、コイツラを倒してはいないと言う。この先に敵以外に待ち受けているヤツが居るってことか?コイツも要注意だな。
しばらく進むと開けた場所に出る。……と言うか森の木がバッサリ切られて倒れている。それも一本や二本じゃない。数百本は倒れているんじゃないか?それに地面まで切られている。こんな大きい斬撃を受けたらひとたまりもない。
ここで戦闘があったのは間違いない。
そしてその強さは化物クラスってか!
ゴエティア72柱……4人来ていると言ってたけど………やってらんねぇ〜。
周りの気配を探ると、更に奥から木の倒れる音が!まだ誰かが戦っている。俺達は音のした方へと足を進めた。
どこだ!どこにいる?音はかなり近いぞ。
俺を含めたみんなは慎重に足を進める。
スキルによる攻撃は必ずしも直接的ではない。
慎重に慎重を重ねても安全とは言えない。
前の方からバキッと大きな音がした。
「あぁぁ」と苦しそうな声が上から聞こえたので見上げると、空から木が降って来る。
「うわぁ!?あぶねぇ!」
俺はギリギリのところで木を躱す。
よく見ると目の前にはトラ顔の化物が木に突き刺さり血を流し「助けてくれ……化物だ!」と言って……絶命した。
いや、お前が化物だからと言ってやろうかと思ったけど、もう聞いてはいない。それに今はそんなことを言っている暇もない。今まで感じたことのない冷たくそして切り裂く様な殺気を感じる。九王を相手にした時でもここまでは感じなかった。
そして今、俺たちの前を現れた真っ黒な衣装を着た女、殺気はコイツから放たれている。
何もしていないのに額から汗が流れた。
ほんの一瞬だった。女は消え見失ってしまった。しかし同時に何故か殺気も消えていた。気がつくと俺は女に押し倒された。
「タクちゃん、生きてて良かった〜〜死んでたらどうしようかと思ったよ〜〜(≧Д≦)」
「え!?母さん?何でここに!」
「タクちゃん!もう大丈夫だからね!母さんが皆殺しにするから!」
母さんは俺を優しく抱き締める。
言葉とは裏腹に優しい温もりを感じる。
「はぁ〜良かった〜。タクト怪我はないか?あるならすぐ言えよ。母さんがイヤだって言っても治してくれるからさ」
「と!…父さん!?父さんまで何でこんなところにいるんだよ!それに何て格好してるんだよ〜」
どこからともなく現れた父さんは、母さんと同じく真っ黒な軽装の鎧と真っ黒なマントを身につけていた。それに手には大きな鎌、パッと見、死神の様に見える。
「タクちゃん!どこか怪我してる?母さんが治してあげるからね!」
「母さん!まだ話の途中でって!ダメダメ母さん服を脱がさないで恥ずかしい〜ってどこも怪我はしてないから〜」
俺は止める間もなく母さんに半裸にされてしまった。
「母さん、タクトは無事みたいだ。本当に良かった。……さてそれじゃ〜まずは君に話を聞かないといけない。話をさせてくれるね!イグニス」
「あ〜もちろんだ!」
父さん決して威圧することなく。だけど下手に出ている訳じゃない。あくまで一人の父親としてイグニスにしっかりと言いたいんだ。
そしてイグニスは逃げない。
別れ際のときと少し違う気がする。
何かを決意したような。そんな顔をしていた。
父さんと母さんの感じから、なんとなく分かっていたけど、二人はバロン様や町のみんなのことを知ったうえで来ているんだ。ならイグニスがやったことも知ってうぐ!?………何だこれは!急に息がで……出来ない〜。
「母さん、そんなに傍で濃い殺気を放ったらタクトが死んでしまうよ!抑えて抑えて!」
「キャーー!タクちゃん!タクちゃん起きてぇ!」
俺は………気が遠くなっていくさなか、一つの疑問が頭の中に浮かんた。それは……母さんあんたは……何者なの?
俺は泡を吹いて気を失った。




