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第106話 イグニスとの戦い……決着!


『マイナスドライバー』

 プラスドライバーと同じくビスを締めたり緩めたりする道具、しかしドライバーにも色々な用途があり、これは少し違う。先端からグリップエンドまで軸が繋がっており貫通ドライバーと言う。このドライバーは

コンクリートや錆を剥がすのに使ったり、隙間に叩き込んでこじったり、他にもいろいろな使われ方をする。


 そしてこれはプラスドライバーの工具が進化し新たな能力を得た。勿論ただのマイナスの貫通ドライバーではない。


 俺はマイナスドライバーをイグニスに向けにそれを思いっきりハンマーで叩く!


 凄まじい速度でマイナスドライバーは飛び、それをイグニスが渾身の斬撃で迎え撃つ。


 マイナスドライバーの威力は凄まじかった。勇者の剣をスパッと切断し貫通、そしてイグニスの胴体を切断した。


 ドサッとイグニスの上半身が落ちる。

 見ていて恐ろしい光景だと思うが決して後悔しない。俺は俺の大切な者を守る。ただそれだけだ。


 静寂な時間が流れる。

 そこにノルンが走って来た。


「タクトやったんだね。すごい……イグニスを倒しちゃうんだから」

 いつものノルンからはあまり言われないお褒めの言葉ではあったが、その言葉には悲しみがこもっているように思えた。多分イグニスが死んだと思い悲しんでいるのだろう。いくら危害を加えられたからと言って、そのままはいそうですか!と納得出来ない。俺もそうだ。イグニスさんが悪い人には見えない。


 だから約束通りに話を聞かせてもらおう。


「イグニス!ボクの勝ちで良いよな!これ以上やったらいじめになるぞ」


「まったくだこの野郎!なんてことをしやがる。なんで普通に俺は生きているんだ!?」


 ノルンと先生があんぐりと口を開いて驚いている。やった張本人ですらこの光景を理解するのは難しかった。


「はいはい、聞きたいことがあるかもしれないけど俺の勝ちだよな。聞かせてもらおうか!」


 上半身と下半身が分かれた状態のイグニスが抵抗出来るわけもなく。動こうともしない。いつまでも黙っているので、もう一度話しかけようとした時だった。イグニスが語ったのは……


「タクト……お前には大切な人がいるか?…………俺にはいる大切で大切で大切な妻がな!」


 空を見てぼんやりと思い出しながら語る。


「俺は師であり火の勇者から勇者の剣デュランダルを預かってから、俺は師のようになるため様々な町を渡り困っている者達に力を貸した。その甲斐あってか、俺は勇者のスキルを持たずして火の勇者と呼ばれるようになった。そんな中出会ったのが妻のカミラだった。彼女は俺と違って聡明で知的な女性だった。俺をいつも優しく諭してくれた。理想の女性だった。そんな最高な女を俺は守れなかった。

 ある日俺が住む町が魔物の大群に襲われた。突然のことだった。どこから発生したのか?凄まじい数の魔物だった。俺は止めたんだ。カミラに町に残るようにと、だけどカミラは言うことを聞かず俺が説得されちまった。確かに彼女は優秀な魔術師、戦力として眠らせておくなんて戦場において間違っていることは分かっていたさ。でもよ俺はカミラに安全な場所にいてもらいたかった。イヤな予感がしてたのかもな、カミラは魔物の角に貫かれて殺された。

 あんなに泣いたとは人生で初めてだった。でもいつまでもメソメソ泣いてたらカミラに叱られちまう。そう思った俺は今まで以上に勇者の肩書を背負い各地を周った。

 そんなある日アイツが俺の前に現れた。ゴエティア72柱……九王の一人…パイモン、今まで会ったことのない不思議な空気を放つ少年だった。こいつが俺に言ったのは『カミラに会わせてあげる』言うことを聞いたら会わせてやる。そうじゃないアイツは本当にカミラに会わせてくれた。ほんの僅かな時間だったが、俺には分かる。あれは本物のカミラだった!そしてパイモンは言った。『カミラにもっと会いたいよね?』それだったらさ、ボクの手伝いをしてくれるかな?彼女を生き返らせてあげるよ。

 それ以上の言葉は俺にはいらなかった。俺はパイモンに従う。………悪魔に魂を売ったのさ」


 ん〜……重い、話が重過ぎる。なんて言葉をかけて良いか分からない。だけどイグニスはノルンや町のみんなに酷いことをした。だから許すことも出来ない。どうすれば良いんだ。


 そんなことを顔に出さないように我慢してイグニスと話を続ける。


『そうか、あいつね。ボクも会ったことがある。なんて言うか、何をしでかすか分からない。そんなヤツだった」


「そう言うことか、タクトはパイモンと会ったことがあるのか。それでアイツが狙っていたのはタクトだったのか」


 ん?今なんて言った。まさか!?

 アイツの狙いは………オレなのか!?


「タクト勘違いするなよ。お前は悪くない!町を燃やしたのも、バロンを斬ったのも、ノルンを攫ったのも全部俺とパイモンのせいだ!お前は何も悪くないからな!」


 必死に俺のフォローをするイグニスさん、そんな姿見せられたらさ。


「…………プッ……アッハッハッハッハ、なんで自分じゃなくて他人を庇っているんですか?そんな顔で言われたら笑えてきますよ。イグニスさん、あなたは悪いことをしました。だけどあなたは悪くない。ボクにはそれが分かりました」


「何を訳のわからないこと言ってるのじゃ、

まったく……」

 先生は呆れたようにため息をつく。


「うん、私はすごくしっくりしたかも、確かにすごく曖昧な言葉なのに、私の胸にはスポンっと入って来たよ!」

 ノルンは笑って言う。俺が言いたいことが伝わったみたいだ。


「タクト……お前は俺を許すとでも言うつもりか!それは違うぞ!俺はお前達に酷いことをしたんだ許されて言い訳がない」

 イグニスは叫ぶように言っているが、勿論これはそんなに簡単な話じゃない。だけど俺はイグニスをただの悪党として斬ることはしない。人は過ちを犯す生き物だ。そしてそれを許すことも出来る。それは長く険しい道のりかもしれないけどイグニスさんだったら出来ると思う。だから俺はそれを信じたいんだ。


………………………………………………


名称∶マイナスドライバー(貫通Ver)

分類∶道具

属性∶空間(切断)

効果∶☓☓☓☓☓

性能∶切った場所を空間停止する

  (切られた場所は血すら

   流すことはない)

………………………………………………


 

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