コール・オブ・マイティ・アメリカ!
――てことは、核を打ち込むってことですか?
「あー、違う違う。君たちね、われわれ米国民を、悪魔かなんかだと思っているだろう。そうじゃない。そうじゃないんだ。この日のために国防総省が開発した新兵器、それを使う。世界ビックリ仰天、九回裏逆転満塁ホームランのスゴい奴だよ」
――ホーム……? 例えが分かりません。
「(ヒソヒソ)クリケットの亜種で、そういうスポーツがあるんだ。ルールを教えようか?」
――結構です。それより、新兵器の詳細を。
「これだ(パタン)。この図の通り、われわれは新型の戦闘機を開発したのだ。こいつを投入する」
――って、これ、UFOじゃないですか! (ざわざわ……) どういうことですか、大統領!
「んん、これはUFOじゃあない。USOだ。正式名称USO800。正式名称は……(ヒソヒソ)ユナイテッド・ステイツ・オムニファイター・800という。そうだな? (ヒソヒソ)世界最強の軍用機、一機でアジアの半分を制圧でき(ヒソヒソ)……んー、UFOなんてチョチョイのチョイの、人類の救世主だよ」
――このUFO……いや、USOで、あのUFOを排除しようというのですか?
「その通り。USO800は超高性能の汎用戦闘爆撃機だ。機体、武装、電子機器すべてに最高純度のユーフォニウムを使用し、こいつに通常兵器は通用しない。仕組みについては……(ヒソヒソ?)私は知らん。まあ、UFOのレーザー砲でさえ、理論上は6発くらいまで耐えられる、んだな? そのうえ、火力は平均的なUFOの3倍、速力は2倍だそうだ。それもこれも、高純度の合成ユーフォニウムのおかげだよ。コヨーテ・メタル万歳。どう転んでも負ける気がしないな、ハハハハ」
――今回の作戦では、いったい何機のUSOを投入するのでしょう? いくらUSO800が高性能でも、敵は巨大です。太刀打ちできるのでしょうか?
「あー、なんだ、投入は一機だ。一機しかないからな。もう一つの質問については、やってみないとわからないとしか言えん。えー、しかし、あのUFOに対抗できる可能性があるのは、わがアメリカのUSO800だけだ。やるしかないだろう。人類の命運はこの機体に握られているのだよ」
――そんな、いい加減な!
「んー、それは違う。勝負事というのは、あるポイントにおいて常に伸るか反るかなの(ヒソヒソ)われわれは負ける勝負はしない。絶対に勝つ。理由は聞くな。まあ、任せておいてくれたまえ」
――それで、攻撃はいつ?
「フフフ、もうすぐだ。実はもう、USOはエジプト(ヒソヒソ)チュニジアに向かって飛行中なのだ。いずれ皆さんは、今世紀最大のショー(ヒソ!)一大スペクタク(ヒソ!)(何だ?)(ヒソヒソ)補佐官の言うことはわからんなあ。……終わり、もういい、会見は終了だ!」
――待ってください! 最後に一つお尋ねします、そんな重要な情報をTVでばらしてしまっていいんですか?
「んー? 君は阿呆か。宇宙人と契約している放送局があると思うか。彼らが見てるわけないじゃないか」
――いえ、でもスパイとか……
「攻撃されても、アブナくならない限り自分からは動かないのが連中だ。わざわざこんな放送を見て、何かしようなんて思わないさ。それより、わが国の断固たる行動について、世界中の人々に知ってもらう方が重要なのだ。ま、そういうこと。じゃあ、攻撃が始まったら、また記者会見するよ。それまでコーヒーでも飲んでいてくれたまえ」
――大統領! ちょっと!
――……
画面が暗転する。
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