準備は着々と!
♪ズンダカ ♪ズンダカ ♪ズンダカ ♪ズンダカ
「こんにちは、BBQ・カサブランカのシャルロット・メシエです。皆さんこんにちは。わたくし達BBQテレビは、地中海地域の総力を挙げて、今回のUFO事件を取り上げています。さて、ここビゼルトの山中には、全世界から続々と集まってきた様々な民族、人種が、昨夜から大きなキャンプを張っています。丘という丘、谷という谷に、無数の人々がひしめいています。今朝方、チュニジア軍の数部隊が混乱収拾のために、漁協と協力してライフラインの敷設に取りかかったとのアナウンスがありました。しかし彼ら、いえ、わたくし達、ご視聴の皆様も含めてわたくし達には、あまり時間がないようです。キャンプの整備や人員の集合が終了するのを待たずに、本日午後1時から、第一回の引索作業を行うとのアナウンスがありました。恐らくUFOに先手を取らせてはならないということなのでしょう。人間の数があまりにも多いため、持ち場へ向かう人の列が、すでに30分も前から動き始めています。ちょっとそこの人に伺ってみましょう。もしもし、この列はどこへ向かっているんですか?」
「あー? 左舷船尾の13番だよ。この列はみんなそうだ。いやー、動きがのろくてまいっちまうよ。あんたは?」
「BBQです。UFO漁の取材です。特に指示があったようには見えませんが、皆さん、持ち場がどこは把握してらっしゃるんですか?」
「あたりまえだ。俺ら綱引きだって専門職だからな。見な、UFOの船尾からロープが三本垂れてるだろ。あのこっち側の奴、あれが俺らの担当だ。まあ、持ち場に着いてから人数調整するけどよ」
「あの細いロープをこの人数で引くんですか? 切れたりしないんですか?」
「ハハ、細い? 目の錯覚だ。UFOがでかすぎんだよ。だけどまあ、あのまんまでは引かねえ。あれをリードにもう何本か渡して、撚って捻って太っといロープにすんだ。ジャンボジェットだって引きずり下ろせるぜ」
「ということは、13時からその作業に?」
「いんや、もう始めてる。見ろ、UFOの上に乗ってる俺らの仲間が、二本目の綱を引き上げようとしてるだろ。……あんたの目じゃ見えねえかな」
「んー……ちょっと眩しくて。どうでしょう。カメラさん、ズームではどうですか……。あー、ちらちらする細い紐が、主索に沿って引き上げられていきますね……。その下に……あー、吊された太いロープが、確かにあります。ゆっくり、ゆっくり上がっていきます」
「だろ。上の連中、えれえ力持ちさ。10人くらいであれを上げてる。素材は軽いが、さすがにあんだけの長さともなると話は別だ。人間わざじゃねえな」
「……凄いですね。あ、最後に質問させてください。綱引きは時間通りに始まるとお考えですか?」
「おう。時間には正確、とくにこんな大物だと、片側が勝手に引いたりしたらえらいことになる。13時には始まるよ。楽しみにしていいぜ」
「ありがとうございました。全世界の皆さん、史上最大の作戦は、あと30分少々で始まる模様です。お楽しみに!」
*
「ありがとうシャルロット。えー、続いてワシントンから、ヤブー大統領の会見の模様をお伝えします。生中継です」
*