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オーストラリアから!

 ラジオのチューナーをデタラメに回したようなノイズが続き、画面の中で暗色の塊が渦を巻いた。粘液体のような塊がねじれ、ちぎれた後、一瞬だけ人の姿を取り、次の瞬間にはもう崩れる。そのたびに、一瞬だけ音声に人の声が混じった。

 やがて、色の渦は映像の中央に集まり出した。曖昧な輪郭が震えたように滲む。そして急に全ての焦点が合うと、街路に立つ一人の男を映し出した。


「メルボルンからマシュー・トッドマンです。ここ豪州では、反捕UFO活動家と一般の人々との間で、激しい投石合戦が勃発していま(ぼこん)危なっ!」


 握り拳ほどもある石くれが、脇に停まった車のドアに跳ね返った。


「政府は、UFOと、戦えーッ!」(戦えーッ!)

「アメリカは、我々を、仲間はずれに、するなーッ!」(するなーッ!)

「宇宙人の、人権を、守れーッ!」(守れーッ!)

「アジアからの、移民は、出て行けーッ!」(出て行けーッ!)


 勝手な主張を汀の潮のように混ざり合わせた群衆が、敵も味方も不明なまま、ゴミや廃材をでたらめに投げつけあっている。その叫喚は不協和音となって、降りた商店街のシャッターをガタガタと震わせていた。


 ウォアアアアアアアアア……


「……いったいいくつの陣営が参加しているのでしょうか! 危険です。これをご覧になっている市民の皆様は、できるだけ出歩かないように注(ボコッ)……。」


 脇から飛んできた石ころに側頭部を打たれ、リポーターがへなへなとその場に崩れ落ちた。


「マシュー! 大丈夫?!」


 カメラは一瞬だけ倒れたリポーターを見下ろしたあと、慌てたように周囲を見回した。激しくぶれる映像の中で、獣のように歯をむき出しにした男女が押し合っている。


 ウアアアアアアア……


「マシュー!」


 映像が暗転し、スタジオに戻った。いつのまにか、リポーターの服装が変わっている。


「……メルボルンから、マシュー・トッドマンでした。マシュー、無事なんでしょうか。しかし、大変なことになっているようですね、ジェレミー?」

「まったくです。ここにいるのが何だかもどかしいですね。情報も錯綜しています。いま、世界各国のBBQネットワークで、集められる限りの情報を収集しています。視聴者の皆様には、未整理でも速報性のある映像のほうが(プルルッ、プルルッ)あ、また外部の映像が入りました。切り替わります」


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