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全部上手くいくよ

今日短めです。すみません!

建国記念日のパーティーが終わり、私たちはベッドに横になっていた。「疲れただろうから、休んだほうがいい」というランタナの気遣いにより、今日は文字通りただ隣で寝ているだけだ。

いやに静かな空間に何だか落ち着かず、目を瞑っては開けるを繰り返す。


「眠れないの?」


隣で寝ていた陛下(ランタナ)が、目を瞑ったまま呟いた。この女は、寝る時ですら陛下の姿を解かない。


「‥‥‥貴方はよく、その姿のまま眠れるな」

「慣れてるからねぇ」

「私と二人きりの時は、本来の姿に戻っても良いのだぞ」

「‥‥‥いやぁ、いつ侍女ちゃんたちが入ってくるかもわからないし、このままでいいよ」


投げやりなその言い方が、こちらを拒絶しているように聞こえてしまい「そうか」と返すことしかできなかった。


「そんなことよりさぁ、」


あからさまな話題の変更に、こちらも助かるから何も口を挟まずに静かに続きを聞く。


「公爵に言われてることを気にしてるんでしょ」

「公爵?」

「世継ぎが出来ないって言われたことぉ」

「‥‥‥確かに、世継ぎ問題は考えなければいけないな。陛下(あなた)が女である以上、相手が誰であろうと子は望めない。解決方法は、二人で考えていこう」

「なぁんだ、アメリアちゃんにしては随分前向きじゃん。それで、眠れなかったんじゃないんだ」


驚いたような声を出したもののランタナの目は、まだ瞑ったままだった。


「‥‥‥気がついていたのか」

「不安は伝達するものなんだよぉ。隣で寝てれば、馬鹿でも気付くよ。で、理由は何なのぉ?」

「‥‥‥」

「今更隠すこともないでしょう?」

「‥‥‥今日、マリーンと挨拶しただろう」

「マリーン? あぁ、公爵の娘ね」

「あの少女は、とても綺麗だった」

「まぁ、整っているって言われる部類ではあったねぇ」


矢張りランタナも綺麗と思ってたんだと知って、ずきりと形容し難い痛みが胸を苦しめる。


「貴方が、私を捨てて‥‥‥あの少女を選ぶのではないかと、不安だったんだ」

「そんなこと思ってたの!?」


そこで初めてランタナは目を開けて、ガバリと上半身を起こした。


「思うだろう。貴方は顔で好きになったと言っていた。ならば、私以上に美しい人が出てきたら、と心配になるのは当然だ」

「そりゃあ、確かにそう言ったけどさぁ‥‥‥」

「この世には、私以上に美しい人なんて沢山いる。その時、貴方は私を捨てる」


私は確信していた。

ランタナは自由で奔放で、そして奔放だからこその冷酷さがある。どれだけ欲しいと望んだものでも、魅力的な新しい玩具が見つかれば古いものなんて何の慈悲もなく捨てる。

そういう女で、そんな女だからこそ惹かれた。


「てかさぁ〜、好きになった理由なんてぇ、そんなに大事ぃ? 別にどうでも良くなぁい?」

「私は気にしてしまうんだ」

「なら、聞くけどさぁ、中身で好きになったって人たちはぁ、永遠に心変わりしないわけぇ?」

「顔が好きという理由よりは、心強いだろう」


ランタナは鼻で笑った。


「そんなの私からしたらナンセンスだねぇ。だって、中身は顔よりもよっぽど変わりやすい。いや、変わらない人間なんて存在しないだろうねぇ〜。それでも、アメリアちゃんは、顔が好きって理由より中身が好きって理由の方が心変わりしにくいって、本当にそう思ってるの?」

「それは‥‥‥」

「ねぇ、もっと柔軟に考えてみなよ。顔が好きってことは中身はどうでも良いってこと。その中身が善人から悪人に変わろうが、私がアメリアちゃんを捨てる理由にはならないってこと。それってぇ、今のアメリアちゃんにとって、すっごく都合の良いことだと思わない?」


ランタナの瞳は雄弁に語っている、もっと気軽に考えろと。

その瞳を見て、嗚呼そうかと、理解する。

今そんなことを考えても仕方ない。どんな出会い方をしようと、どんなところを好きなろうと、人の心は移ろいやすいさは変わらない。

絶対に心変わりしないなんてことは、誰であろうと保証できないのだ。


どれだけ心配しようとも、人の心は操れない。

だから、私は私の出来ることを‥‥‥幕引きだけを考えればいい。


──どう終わらせたら後悔しないか。


「アメリッ、!」


何か言いかけたランタナをベッドに押し倒し、馬乗りになって肩を押さえつける。突然の暴挙にランタナは目を見開いていた。その珍しい顔が無性に愛らしかった。


「ランタナ、ひとつ約束してくれ」

「何、急に。どこでスイッチ入ったの」

「貴方が私のことを捨てる時、その時は、私のことは殺してくれ。そうすれば、私も少しは気楽に生きれる」


驚いた顔は、私の言葉を飲み込むと一気に笑顔に変わった。あはははっと、腹を抱えそうな勢いに今度はこちらが面食らう。


「ひいっどい殺し文句。ったく、どうしてそっちに吹っ切れるのかねぇ」

「‥‥‥私は本気だ」

「だからこそ、タチが悪いんでしょ〜」


ランタナは笑いを抑えると、突然起き上がった。私はその衝撃で、後ろに倒れてしまう。先程とは逆に、今度は私が押し倒されたような体勢になってしまう。


「私ねぇ、未来の約束って好きじゃないんだぁ〜」


目を逸らした私の顔をグッと引き寄せて、無理矢理合わせられる。


「でも、こんな熱烈なこと言われちゃうとねぇ。引き受けないわけにもいかない」

「それって」

「いいよ、殺したげる。私が飽きて捨てた時は、この世から跡形もなく消し去ってあげる」


そう言うとランタナは、触れるだけの接吻を唇に落とした。


「感謝する、ランタナ」

「‥‥‥本当、アメリアちゃんは趣味が悪いよ」


呆れたように笑うランタナに、私も笑い返す。


「知らなかったのか。私は男の趣味も女の趣味も悪いんだ」


一瞬惚けたような顔をしたランタナは、次いで「違いない」とどっと吹き出した。


「大丈夫、全部上手くいくよ」


再び落ちてきた接吻に、今度は自分から舌を押し入れる。


何も解決していないのに、ランタナの言葉ひとつでどうしてだか上手くいくような、そんな気がしてならなかった。

ランタナらしさが出た回で、気に入ってます。

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