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本心

つかさは生きること自体が辛かった。今までずっと。特にマサと会っていなかった期間は一番辛く虚しかった。あの忌々しい過去が、自分以外の誰の心にも残らず消え去ってしまいそうで。だから仕事を辞めてマサの所へ転がり込んだ。

今思えば、"マサならこの虚しさをどうにかしてくれるかもしれない"という一縷の望みもあったのかもしれない。要は彼にこの虚しさを一緒に背負って欲しかったのだ。なんて自分勝手な考えだろう。とつかさは思う。


マサにとってもあの過去には苦々しい思いがあるだろう。それなのに、また自分だけ助けてほしいだなんて。


ーーあの時こうしていれば。もしも自分がこうじゃなかったら。ーー


つかさの人生は、そんな考えばかりに支配されて、後悔にまみれた人生だ。


辛かったこと、しくじったこと、傷つけたこと。変えたい過去は山ほどある。出来ることなら誰かと自分を入れ替えたいし、消えられるのならこの世から消え去りたいとさえ思ったこともある。


しかし残酷なことに、どれだけ後悔したって過去は変わらない。明日も現実はやってくる。


ではどうやってあれらの過去に立ち向かえば良いのだろう。あの、今もなおつかさを苦しめてくる過去たち。


つかさは思った。あの過去を"自分の人生にとって無駄なこと"にするのは、あまりに可哀想だと。

無駄なことに心をすり減らして耐えていたなんて、あの頃の自分が哀れではないか。

せめて何か意味を持たせてあげたい。

あれだけ苦しんだことには、何か意味があると。


そのためには今を生きなくては。いつかあの過去に意味を見い出すために。ちゃんと生きなくては。


まずは正之助に気持ちを伝えよう。私もあなたを守りたいと。


それが、たらればに支配されて過去と現実から目を背けてばかりの人生を変える第一歩になるはずだ。


つかさは鬼塚の部屋を出た足で、そのまま正之助の部屋へと向かった。


そして再び訪れた襖の前で声を張り上げた。


「マサ!! 入るよ!!」


「……。……お、おう。」


正之助がつかさの勢いに押されて思わず返事をする。

つかさはその声を聞き、いつかの誰かさんのようにスパァンと襖を開けた。


どこか吹っ切れた様子のつかさと、その様子に拍子抜けしている正之助の視線がぶつかった。

ずかずかと部屋に入り、先ほどと同じ座布団の上に居座るつかさ。

正之助もタバコさえ吸い終わったものの、窓際から動いてはいなかった。


つかさはゆっくりと話し始める。


「今まで、大変なことの方が多かった。人付き合いは苦手だし、仕事ではミスばっかり。……ずーっと生きづらかった。でも、こんな私でもマサと一緒にいる時だけは幸せだった。」


一呼吸ついて、再び口を開くつかさ。


「……だから、これからも一緒にいさせて。」


少しの沈黙のあと、正之助は重々しく言葉を発する。


「勘違いじゃねぇの。」


「……。」


「お前には辛いことがあったから、それを乗り越えるために俺の事を美化してんだろ。他の男んとこ行きゃあきっとその勘違いに気づくぜ。俺はやめとけ。」


またしても突き放すような彼の言葉に、つかさは今度こそ真っ向から言い返す。


「やめない。自分の幸せは自分で分かってる。それに、今までずっとマサに守ってもらった。マサは私のヒーローだよ。でもこれからは、私もマサを守りたい。」


黙り込む正之助に、つかさは話を続ける。


「ここには、私達を必要としてくれる人達がいる。私はそれに応えたい。だから、2人で隊長になろう。私達は、お互いを守り合って戦おう。」


「……あぁ? 2人でって……何言ってんだお前は。」


唐突な話に戸惑う正之助。


「これは鬼塚さんの提案だよ。今話してきたの。」


「……。」


「私、こっちの階層との相性が良いんだって。だからこっちに来てからは人混みでも頭痛や吐き気がしないの。」


正之助はつかさの話を黙って聞くことにした。


「私、自分がマサの近くに居ることで、ずっとマサを傷つけてると思ってた。でも、これからはそんな風に考えるの止めようと思う。13年前、どんな意味があってあんな事が起きてしまったのかは分からない。でも、"これからは私もマサを守る"。その思うきっかけのために起きたのだとしたら、もうこれ以上クヨクヨしてられないって思った。」


つかさは意志の篭った瞳で正之助を見つめる。


「私はマサと2人で、お互いに背中を守って隊長やりたい。マサ、これからはあの日の事も私に一緒に背負わせて。もう貴方1人だけに負担はかけさせない。」


「……負担、なんて思ったこともねぇよ。……俺にはアイツと同じ血が流れてる。この体じゃ、お前の横に居ることさえ憚られんだよ。だからもう一緒にはーー」


全てを聞く前に、つかさの体は動いていた。

初めて正之助の本音を聞いて、動かずにはいられなかったのだ。


気付けば正之助はつかさに抱きしめられていた。


「……!」


状況を理解するのに時間がかかり、少々フリーズする正之助。

しかしそんな正之助を差し置いて、つかさは抱き締める力をぐっと強めた。


「……そんな風に思ってたの…。」


つかさは自身の声が震えるのを感じた。

そしてそれは、正之助を動揺させるのに十分な威力だった。


「私はマサのこと、そんな風に考えたこと無かったよ。」


つかさは少し体を離して正之助の両頬を優しく包んだ。


「……あの人とマサは、違う人間だよ。」


「……!」


正之助は自分がずっと背負ってきた罪が、まるで背中から消えて無くなったかのような錯覚に陥った。


ずっと、自身を罪深い人間だと思って生きてきた。

親を殺したことではなく、親と同じ血が半分も流れていることに対してだ。

それなのに、つかさの一言で穢れた血が浄化されていくような感覚を覚えた。


肩が、軽くなった気がした。


そして正之助はついにつかさの体に腕を回した。


「……!」


つかさが驚くのも無理はない。

彼がつかさに触れたのは、あの日の夜、公園でつかさの頭を撫でたのが最後だからだ。


あの日から今日まで、ずっと自分に課してきた罰を正之助はようやく忘れることができた。






それからというもの、あっという間に時が過ぎた。

つかさと正之助は鬼ヶ島に住むことになったが、ポータルが開く日に一旦日本へ戻り賃貸の解約や退職の手続きなどをこなした。

そして再びポータルが開く日に、最小限の荷物を持って船で鬼ヶ島へ引っ越しをしたのだった。


鬼ヶ島では隊舎に住むことになっているのでライフラインの確保は出来ている。

必要なものはこれから少しずつ集めていけば良い。


そして引っ越し早々、2人は隊長就任試験を受けることとなった。


就任試験の場所は親衛区・鬼尊城。

内容はタイマンだ。


受験者は自らが指名した組長と一対一で勝負する。

どちらかが戦闘不能になるか降参すれば試験終了だ。

しかし、勝てば合格という訳でもない。

タイマンに負けても、隊長として申し分ない戦闘力を示せば良い訳だ。


そんな話を伊吹に聞かされながら、つかさと正之助は約2ヶ月ぶりに鬼尊城に来ていた。


3人は今まさに、紬に"稽古の間"まで案内されたところだ。

大きな扉の前で紬が振り返って言う。


「ここが試験場の"稽古の間"です。」


「ありがとうございます。」


紬に礼を言うつかさ。


「タイマンねぇ……殺さねぇようにしねぇとな。」


「その心配はありません。組長はどなたも隊士100人分以上の力を持っていますから。」


呑気な正之助と、それを構う伊吹に紬が視線をやった。


「ここから先は、私語は慎んだほうが宜しいかと。それでは、行きましょう。」


開かれた扉の先には、鬼塚率いる組長らしき軍団が勢揃いしていた。

つかさ達の対面に横一列にズラリと並ぶ7人の組長達。


「おいおい、随分細っこい人間が来たじゃねぇか! こんなんで本当に大丈夫なのか!? 鬼塚!!」


ずいぶん大柄なツンツン頭の男が声を荒げてつかさたちを見た。

すると、隣の1番大きな男が優しい口調でツンツン頭をたしなめる。


「こらこら。いつも言ってるだろう。鬼塚様にそんな言葉遣いで話しちゃあいけないよ。」


1番小柄な少年が眉を顰めて言う。


「確かに弱そうだな。本当に通り魔を殺した奴なのか?」


「お前が弱そうとか言うなよ。」


すかさず優男が、少年を茶化した。


「あ"ぁ!?」


やや年配な隻眼の女鬼が、煙草をふかしながら言う。


「……前任のじいさんと同等の実力があんなら、私は構わないよ。」


「……。」


長い黒髪が特徴的な細長い男は黙ったままだ。無口な人柄なのだろう。


「……。」


五十嵐はニッコリとつかさと正之助に微笑んだ。

それに2人が気付いた直後、鬼塚の声が響き渡った。


「組長は各々、受験者に自己紹介を。」


その言葉を聞き、つかさ達から見て左の大男が口を開いた。


「竜組の組長をやらせてもらっています。竜小太郎(たつこたろう)と申します。以後お見知りおきを。」


その右横いるツンツン頭が続けて口を開く。


「俺は松葉組組長、松葉剛(まつばごう)だ! よろしくなぁ!」


次は、さらに右横の優男風の男。


「竹節組組長、竹節朔(たけぶしさく)です。今日は頑張って。」


続いて長い黒髪が特徴的な細長い男だ。


「東雲組組長、東雲黒(しののめくろ)。」


その横にいる小柄な少年の番がきた。モジャモジャとした金髪が特徴的だ。


「青葉ジュウゴ。青葉組の組長だ。」


その次に、五十嵐が微笑みながら挨拶する。


「知っての通り、五十嵐嵐だ。2人とも応援しているぞ。頑張れよ!」


そして1番左端にいるのが隻眼が印象的なやや年配の女鬼。


「紅梅組組長、紅梅紅子(こうばいべにこ)だよ。試験がんばんな。」


それぞれが自己紹介を終えると、鬼塚の声が再び響き渡る。


「これより、五十嵐組1番隊隊長就任試験を執り行う! 受験者は龍崎つかさ、谷正之助だ。今から2人にはサシで勝負する組長を選んでもらう! つかさ、正之助。誰でも良い。いい相手を選んだら指で指し示せ。」


2人がそれぞれ相手を指名する。

つかさは紅梅紅子を、正之助は松葉剛をそれぞれ指差した。


「いいだろう。まずはつかさからだ。つかさ、前へ。」


鬼塚の言葉に従って前に出るつかさ。

つかさが選んだ相手は女鬼の組長だ。彼女も前へ出てふかしていた煙草を携帯用灰皿にしまうと、背負っていた刀を手に持ち直した。

そしてつかさを見る。


「……アンタは、私が女だから選んだんだろうね。悪いけど、手加減はしてやれないよ。」


「はい、よろしくお願いします。」


つかさが怖気付いていないことを確認すると、紅子はニヤリと口角を上げた。


「いい目だ。規則に則って刀は抜かないから安心しな。」


この試験では指名された相手は武器を使ってもいいことになっている。ただし相手を殺さないよう鞘に納めたまま戦う。


「………それでは、試験開始!」


鬼塚の合図がされた、その時。

紅子が目にも止まらぬ速さで居合いを仕掛けた。

つかさは反射的に横へ飛び退く。

が、バランスが崩れて地面へ転がる。


「ババァの居合いを……避けやがった!!」


ツンツン頭の松葉剛が驚いて声を上げるが、驚いたのは彼だけではなかった。


そう、つかさは居合いを避けた。

しかし彼女の服はパックリと切り裂かれていた。

下の皮膚も少し出血しているようだ。


「いや、少し掠った。」


無口な東雲黒がボソリと呟く。


「掠ったとは言え、あれを避けるかぁ。」


「つかさくんがここまで動けるとは、私も知らなかったなぁ。」


「つーか普通、鞘ごと居合いして服切れるか……? ババァおかしーだろ。」


竹節朔と五十嵐はつかさに感心し、剛は紅子の剣技に引いている。


「よく避けた。次だ。」


そう言いながら、紅子はグッと距離を詰めて横から素早く刀を振る。それを何とか後ろへ避けるつかさ。

その後も次から次へと繰り出される剣技を、どれも間一髪で避けていく。


「逃げてばかりでは私には勝てんぞ!」


「……っく!」


紅子が少し動きを緩めた隙をついて、ついにつかさが反撃に出た。

拳を構えて、前へと繰り出す。

その動きはボクシングのそれだ。


「ほう、人間階層の格闘技か。面白い。」


だが紅子は易々とつかさのパンチを避けている。

一向に当たる気配はない。

つかさは考えた。

どうしたらこの敵に致命傷を与えられるか。


そして彼女は賭けに出た。


「次は私の番だ!」


紅子が再び前へ出た。

俊速の刀がつかさを襲う。

しかし、つかさはそれを避けなかった。


「ーー!」


「馬鹿野郎! 避けろ!!」


遠くから正之助の声が聞こえた気がした。

その声を頭のごく端っこで処理しながら、自身に刀が当たることを覚悟して、彼女は拳を構える。

そして、一歩踏み込んだ。


ーーバチンッ


その音は刀がつかさに当たった音か、パンチが紅子に命中した音か、区別がつかなかった。

それほど同じタイミングで両者の攻撃は命中していた。


「……げほっ!! ごほっごほっ!」


ただし、倒れ込んだのはつかさの方だった。

横っ腹にもろに刀ーー鞘に入った刀だがーーを食らったのだ。

紅子は少しふらついたが、膝に手をやりなんとか立っている。


鬼塚の声が響き渡った。


「勝者、紅梅紅子!」


「ナイスガッツじゃないか。ほら、立てるかい?」


紅子はつかさに近づき手を差し伸べた。


「……あ、ありがとうございます。」


その手を掴みなんとか立ち上がるつかさ。

紅子に支えられて、ふらつきながらも正之助、紬、伊吹の居る方へ歩いていく。


「馬鹿野郎、ヘロヘロじゃねぇか。」


正之助がつかさに近づき、紅子から彼女を奪う。

そしてつかさをゆっくりと座らせた。


「次、谷正之助! 前へ出ろ。」


鬼塚の声に従い、正之助はすぐに前に出た。

正之助が先ほど指差したのは、2番目にガタイの良い松葉剛。

剛も正之助の前へ出る。


「せいぜい死なねぇように気を付けな。」


「こら剛、試験で殺しは御法度だよ。」


後ろから剛をたしなめる竜小太郎に、彼は噛み付くように答える。


「わーってるよ!」


「そっちこそ簡単に死ぬんじゃねぇぞ。殴りがいがねぇからよぉ。」


歪んだ笑顔でそう挑発する正之助。剛の額にはピクリと血管が浮かんでいる。


「ぬかすじゃねぇか。ヒョロヒョロがぁ。」


剛はどうやら素手で戦うタイプらしく、その手に武器は持っていない。


「試験、開始!」


鬼塚の号令ではじめに動いたのは正之助だった。


大きく踏み込んで剛の鼻にパンチをお見舞いする。

正之助は彼の鼻を折るつもりで拳を振るった。

しかし。


「ずいぶん優しいパンチじゃねぇか。」


それは全く効いていなかった。


「おいおい、ずいぶん頑丈な鼻だなぁ。」


正之助はほんの少しの焦りと今まで感じたことの無い高揚感を覚えた。

剛が正之助の腹を蹴る。


正之助は少し後ろへ吹っ飛ぶが、体制を立て直して素早く攻撃を再開した。

何度も何度も剛の顔に拳がヒットしているが、それが効いている気配はない。


「おい、軽いんだよ、パンチがよぉ。」


剛は至極つまらなさそうに、正之助の頬を殴った。

正之助は腕でそれをガードしたつもりだったが、口の中がパックリと切れたのを感じる。

口内に血の味が広がった。


しかしそんな事をお構いなしに再び拳を振り下ろす。それは剛の顎へヒットした。


「……?」


剛は僅かな違和感を感じた。

正之助の拳が先ほどより威力を増したように思ったからだ。

しかしそれは瑣末な事だと思い直した。

どう考えても正之助が自分に勝つ要素はないからだ。


人間という、ただでさえ鬼より弱い種族の、細い男が、剛のような筋骨隆々の鬼に勝てるわけがないのだ。


剛はそれを哀れに思いながら、とどめを刺すパンチを数回放った。


そして、正之助は床にパタリと倒れた。

その顔は腫れて血まみれだ。


「勝負…、ありましたか。」


伊吹が残念そうに呟いた。

しかしつかさが、それに意を唱える。


「いいえ。多分、これからですよ。マサのサイコっぷりが見れるのは。」


「…あん…?」


剛や他の組長たちが、つかさの言葉に疑問符を浮かべる。


すると。


倒れていた正之助がピクリと動いた。

そして、ゆっくりと立ち上がる。


「……!」


その様子を見て、剛は無意識に頭の前で拳を構えた。

正之助は腫れた顔で歪んだ笑みを作っていた。

腕はダラリと垂れ下がっているが、ふらつく様子はない。

そした、笑みで歪んだ口から音が漏れた。


「あ"ぁぁ……。……だいぶ良い感じになってきたぜぇ。久しぶりだなぁこの感じ。……頭からスーッと血が抜けてよぉ。……体もさっきより、動かしやすいぜ!」


言いながら、正之助は剛の腹へ拳を埋めた。


「……ぐっ……こいつ…!!」


剛は思った。


ーー自分はさっき死ぬ一歩手前のパンチを何回もお見舞いしたはずだ。それなのに。こいつは何回殴れば倒れるんだ?ーー


そして確信した。正之助の拳の威力が増していることを。

剛の胸の中に、一抹の不安のようなものが芽生え始めた。


正之助はーー原理は分からないがーー先ほどよりも確実にパワーアップしている拳で剛を襲う。


「…ぐはっ……おいおいおい…!! 何なんだこいつは!!」


剛は正之助のパンチを避けながら焦りを口にした。

そう、避けながら、だ。

最初は正之助の拳など屁でもなかった。

それなのに、今は避けなければならないと彼の直感が叫んでいる。

それでもパンチのラッシュが何回か剛に掠った。


そのせいで彼の体制がよろけた、その時。


正之助の拳が剛の顔面へ命中した。


「グッ……!!」


剛は何とか踏みとどまり、正之助に反撃する。

そのパンチは正之助の腹へと沈み込んだ。


「……カハッ……!」


2人が距離を取りお互いに離れると、何秒かの静寂が訪れる。

そして、そのまま2人は倒れ込んだ。


「……両者、引き分け!」


鬼塚の声が響き渡り、何人かの組長が拍手をしている。

正之助の戦いはそれほど壮観なものだった。


つかさと伊吹が正之助に駆け寄り、彼を抱き起こす。そして先ほどまでいた場所に戻った。

剛は大男が首根っこを掴んで組長達の元へと連れて行かれる。


それを見届けた鬼塚が再び声を張り上げた。


「龍崎つかさ、谷正之助の両名は、1番隊隊長就任試験合格とする! 試験終了!」


こうして、鬼ヶ島で初となる隊長2人体制の隊が生まれたのだった。

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