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こほうぎどなたの娘
こほうぎどなたが温泉の中で産んだ子供は、すくすくと育った。
アルバイト先の温泉旅館の女将が面倒を見てくれて、すくすくすくと育った。
女の子だったので、名前は『こほうぎどなた?』に決まった。
名前にクエスチョンマークがつく人間は初めてだったそうだ。
母どなたは、ベビーベッドで眠るどなた? に語りかけた。
「どなた? あなたの名前は、どなた? だよ。大きくなってね、どなた?」
14歳の母どなたは母乳をたっぷりと飲ませ、愛情もたっぷりとどなた? に注いだ。
家には戻れなかった。戻ったらきっと、父に叱られる。母にも叱られる。上の姉はきっとどーでもいいような態度を取るだろうが、それもなんか嫌だった。
ある日、こほうぎどなたがバイトする旅館に、下の姉のそなたが彼氏と二人で泊まりにやって来た。
どなたとばったり会うなり、そなたは言った。
「どなた!?」
どなたは隠れもせず、答えた。
「どなた?」