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こほうぎこなたはかく語りき  作者: フリードリヒ・ハラヘルム・タダノバカ
真三章 名作古典SF全集
83/213

冷たい引き算

 私がある星での調査をするため、一人乗りの宇宙船で宇宙空間を旅している時のことだった。


 モニター画面にこんな情報が現れたのだ。


『酸素の消費量が深刻なレベルです。今すぐ呼吸をするのをやめてください』


「そんなことを言われてもな……」

 私は首をひねった。

「コンピューターの故障か? 酸素は地球へ戻るまでじゅうぶんな量があったはずだ」


 とりあえず調べてみることにした。どこかに風穴が空いていて酸素が外へ漏れ出してはいないか、酸素ボンベのバルブが壊れていないかどうか。


 そうしていたら、意外なものを見つけてしまったのだった。


 荷室のハッチを開けると、動くものがあった。確かに荷物の陰に何かが隠れた。


「誰かいるのか?」


 するとばつが悪そうに笑いながら、女子高生が姿を現した。


「エヘヘ……。見つかっちゃった」


 なるほど。原因はこれだったのだ。

 私一人用に準備されていた酸素を、彼女も吸っていた。それゆえにコンピューターは正確に、地球へ帰還するまでに酸素がなくなることを計算によって弾き出していたのだ。


「なぜここにいる? いつの間に、何のために乗り込んだ?」


 私が聞くと、彼女は明るい笑顔で答えた。


「宇宙船を乗っ取るのって楽しそうだなと思って」


「出てけ」


 私は彼女を二重扉の間に押しこむと、船外放棄した。



 密航者を躊躇なく船外放棄し、酸素の消費量が正常に戻ったことを確認すると、私は窓の外を眺めた。

 青い地球が遠くなって行く。美しいその地球をバックに、さっきの女子高生が飛んでいた。


「バカな……。宇宙空間に生身で放り出されたらパンパンに膨れ上がって死ぬはずだ」


 女子高生は物凄い笑いを浮かべてこっちへやって来た。


「私の名前みんまえはこほうぎこなた。主人公ゆえに死ぬことはないのじゃー!」


 窓をぶち割り、入って来た。


「船外放棄されて死ぬのはお前じゃ、船長ォォォー!」


 そうして私は宇宙空間に放り出された。

 主人公でないばかりか名前すらないモブキャラとして、物語の外へ放り出されても何の支障もこの連載作品に対して及ぼさなかったからである。

 冷たい引き算だな、と思った。


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― 新着の感想 ―
[良い点] なんか、映画『エイリアン』のクライマックスシーンっぽいwwwwww [一言] 熱い童貞色♡
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