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こほうぎこなたはかく語りき  作者: フリードリヒ・ハラヘルム・タダノバカ
真三章 名作古典SF全集
81/213

アホへの扉

 猫のしーにゃんは冬になるといつも家中をうろつき回り、すべての扉を開けて回る。

 寒いので、家族がいちいち閉めるのであるが、閉められた扉を見るとしーにゃんがまた開ける。


「夏への扉を探しているのね?」


 次女のそなたが聞くと、しーにゃんは「ううん? 違うよ」という顔をした。


 ハインライン『夏への扉』の時代なら、猫は寒い冬を嫌うもので、家の扉のどれかが楽しい夏に通じているものとして開けて回ったのであろう。

 しかし現代の夏は暑すぎて、猫には特に地獄である。しーにゃんがそんなものを探しているわけがなかった。しかも冬もこたつであったかい。


「アホへのを探しているんでしょう?」


 長女のこなたがそう聞くと、しーにゃんはうなずいた。




 その頃、三女のこほうぎどなたは遠い未来にいた。

 氷の魔法使いによって氷漬けにされ、洞窟の中で長い長いコールドスリープをした末に、遂に未来人に発見されたのだ。

 氷が溶けて蘇生したどなたは全世界のニュースとなった。

『氷漬けのマンモス』と呼ばれ、あったかいココアをふるまわれ、金持ちに買われ、養女となった。

 彼女の知性の並外れた低さは未来人を優越感に浸らせ、いい気持ちにさせ、ゆえにどなたはかわいいペット扱いされた。


 金持ちの主人はどなたに言った。


「欲しいものがあれば買ってあげるよ」


 どなたは答えた。


「あなたはどなた?」



 遠い未来にもタイムマシンは存在していなかった。時間旅行は実現不可能なものだったのである。


『夏への扉』のように、コールドスリープで未来へ行くことは出来ても、タイムマシンで戻って来ることは出来なかったのだ。


 どなたは、べつにどうでもよかった。


 アホなので、元の世界の誰のことも既に記憶になかったので、懐かしむこともなかったのである。




「にゃ〜」


 しーにゃんはそれでもアホを探し続けていた。



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― 新着の感想 ―
[一言] ……なんかちょっとかなC (´;ω;`)
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