ときめきジェノサイド
川で水遊びをするこなたちゃんの姿を、僕は岸の上から眺めていた。
こなたちゃんはかわいく、まるで子供のように、白いふとももを揺らして、楽しそうに遊んでいる。
僕はなんとなく、聞いてみた。
「こなたちゃん、楽しい?」
こなたちゃんは声を弾ませて振り向きながら、笑顔でウィンクをしながら答えた。
「ちっとも」
ああ……。愛しいな。
こんな夢のように楽しい世界が、もうすぐ終わってしまうなんて……。
中央管理センターが稼働を停める。もうすぐ、その役目を終えてしまう。
中央管理センターが停まってしまったら、人間は誰も生きてはおられない。よく知らないが、そういうものなのだそうだ。
空は青く、川の水は澄んでいる。
それでも中央管理センターが停まってしまったら、僕達人間の歴史はそこで終了するのだ。誰にもどうすることも出来ない。
こなたちゃんも僕も、電池が切れた玩具のように、動きを止めてしまうのだろう。
僕らは岸に建てられた誰かのログハウスにお邪魔すると、冷蔵庫を漁った。結構いいものがある。っていうかなんでコンビーフの缶詰が冷蔵庫に入っているんだろう。
この家を利用してた人たちはきっと地球外へ脱出したのだろう。地球外へ逃れれば、助かるのだろう。でも、僕らにはそんなことを可能にするためのお金がない。
「今日はここに泊まろっか?」
こなたちゃんが言った。語尾に「ウフッ」がついた。
「2人で?」
僕は聞いた。語尾に「ゴクリ」がついた。
「当たり前でしょ」
こなたちゃんが得意の言い間違いをした。なんだか「通り魔」と言いたいように思える。
「朝まで2人でアレしましょう」
「……ってことは」
僕はこなたちゃんに飛びかかった。ルパンのように。
「こーなたちゃあーん!」
ぼかちーん!
僕はこなたちゃんのふとももの間から突如飛び出したボクシンググローブに殴り飛ばされ、床にへろりと落ちた。
「……違うの?」
泣きながら僕が言うと、
「違うかも」
こなたちゃんは向こうを向きながら、そう言った。
コンビーフのステーキで夕食を取り、すやすや眠るこなたちゃんから屋根裏部屋に隔離されながら、僕は丸い月を窓から眺めた。
僕の天才的頭脳でも中央管理センターを稼働させ続けるにはどうすればいいのか、わからなかった。
『しかしなぜ、中央管理センターが停まったら世界が終わるんだろう』
そんな考えても仕方のないことしか、僕には考えることが出来なかった。
そして、答えは出なかった。
その数日後、中央管理センターは静かにその運転を停止した。
人類は滅亡し、灰のような雨が地上に降り続いた。
僕らは為す術もなく――
次の日、川で水遊びをするこなたちゃんの姿を、僕は岸の上から眺めていた。
こなたちゃんはかわいく、まるで子供のように、白いふとももを揺らして、楽しそうに遊んでいる。
僕はなんとなく、聞いてみた。
「こなたちゃん、楽しい?」
こなたちゃんは声を弾ませて振り向きながら、笑顔でウィンクをしながら答えた。
「ちっ