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戦士
前部分『怪力サムくん』を読み返し、こほうぎこなたは呟いた。
「う〜ん……。久々に、書いた記憶が飛んでるな」
無理もない。ビールを500ml飲んだあとにウィスキーの瓶を約半分空けたのだ。
「でも、何よ、これ。あたしが死んでしまったら、世界はどうなるの?」
とりあえずどうもなってはいなかった。
「とりあえずサムくんとの再戦を希望するわ。あたしは戦士だもの。ヤらせて!」
サムくんがやって来た。
「うおー」
「今度はあたしが勝つわ!」
「やめて」
「やめない!」
サムくんは泣き出してしまった。
「やめて……。やめてよお姉ちゃん。ボクがなにかした? ボク、見た目が緑色でキモいだけなのに……」
「あっ……。ごめん」
「もう……いじめない?」
「いじめない、いじめない。もとよりいじめてなんかない」
優しく頭を撫でたこほうぎこなたの首を片手で握ると、サムくんは怪力でブチ切った。
「人の心の中は見えないものだ。ゆえに、信じるしかできないものだ」
こほうぎこなたはこう言った。