アダムスキー玲子
僕が五宝木さんにフラレて屋上で落ち込んでいると、空が眩しくなった。
「あ。空からシャンデリア降りて来た……って、そんなわけあるかいビシッ!」
僕が1人でツッコんでいると、それは目の前に着陸した。
アダムスキー玲子だった。
って、誰やねん、それ。ビシッ!
アダムスキー型UFOみたいなめっちゃ変な形のスカートを穿いた貴婦人だった。まさかそのスカートでパラシュートのように空から降りて来たというのか!?
「この学園に」
その貴婦人は僕に言った。
「こほうぎこなたという名前の女学生がおりまっしょい?」
変な語尾だった。
僕は答えた。
「その名前……今はあんまり聞きたくないんだけど」
フラレたばっかりだからな。
貴婦人の目がピカッと光った。
意味はないようだった。
「玲子?」
屋上の扉をスパーン!と開けて五宝木さんが颯爽と現れた。
「玲子なのね!? 地球に何をしに来たの!?」
「玲子よ。間違わないでちょうだい」
貴婦人の目が怖くなった。
「我がライバルこほうぎこなた! ワタクシの勝負を受けてくれまっしょい!」
その変な語尾どうにかしろ。
僕はフラレたばっかりだったので、五宝木さんに見つからないようにアダムスキー玲子の後ろに隠れた。
「うまいわ! 賢人くん! いいポジション取りだわ! 2人で圧し潰すわよ!」
そう言い間違えながら五宝木さんが金色のツインテールをなびかせながら、走って来た。
ドゴオッ!!
五宝木さんのラリアットを受けて、僕はコンクリートの壁にめり込んだ。
「ふほほ、ふほほ」
アダムスキー玲子はいつの間にかワープして攻撃を避けていた。
「ぶっふほるつ、ぶっふほるつ!」
なんて変な笑い方だ!
「無様ね、玲子」
何を指して無様だと思ったのかはわからないけど、五宝木さんがそう言った。
「言っとくけど私、笑い方は普通だから」
言葉遣いが普通じゃない自覚、あったんだ!?
笑い方を批判されたアダムスキー玲子は傷ついたように肩を落とすと、そのままフワ〜ッと浮き上がって、アドバルーンみたいに空へ上がって行った。
「勝ったわ!」
五宝木さんが喜びのダンスを踊りながら、僕のほうへやって来た。
「ごめんね。大丈夫? こんなに壁にめり込んじゃって」
「だ、だーいじょーうぶだあー……」
珍しくボケた僕にびっくりするような顔をすると、五宝木さんはぷっと吹き出した。
「じゃ、ココイチのカレーでいいわ」
なぜか僕は学校帰りにおごらされることになった。
まぁ、いい。これで僕はまた五宝木さんと付き合えることになったのだから。