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こほうぎの長女こなた
「皆まで言う必要ないわ」
こほうぎこなたは胸を張った。
「あたしがこほうぎ家の長女であり、この小説の主人公、こほうぎこたなだもの」
張った胸は変幻自在であった。
巨乳好きの目には巨乳に見え、微乳好きの目には微乳に見える。
ホモの目には逞しい胸筋がムキムキしているように見えるという、誰にとっても理想の胸に化けられるものなのである。
「見てよ、この美しい顔!」
スタイルのみならず、その顔も変幻自在である。
男にとっては最も好みの顔、女にとっては最もなりたい顔に見える。
誰にとっての理想にもなれるのである。
「そう! それが、この、こほうぎこなた! きゅぴーん☆」
つまり、それは、実体のない、空っぽなのである。
「……えっ?」
何者にもなれるということは、逆にいえば何者でもないということなのである。
「ちょっとやめてよナレーター。何よ、あたしのことそんな∞(無限大)ガールみたいに」
あくまでポジティブで、膝はつかない正確であった。