こほうぎの次女そなた
こほうぎ家の次女、こほうぎそなたは一家で唯一の常識人である。
それゆえに、他の家族からはどうにかしてあげないといけない出来損ないだと思われていた。
夜、そなたがそっと二階から下りてみると、他の家族4人が会議を開いている。
そなたはそっと耳を澄ませた。
「そなたを……あの子をどうにかしてやらなければ」
「お父さん。あなたがあんまり甘やかして育てたからよ」
「あら。ママだって甘やかしてたわよ! あたしの玩具をそなたが使ってても、叱らなかったじゃない」
「ひひひ。お姉チャンバラってどなた。オネエチャンの変換で予測の候補に出るんだけど、どなた」
父も、母も、姉も、妹も、自分がどうにかしてやらなければ……。そなたはそう思っていた。
はっきり言うと、そなたはこの小説の主人公の座を狙っている。
この小説を、家族で唯一まともな自分が正しい道に導く物語にしたがっているのだ。
そなたは意を決すると、家族会議をしているバカ達の前にバッ!と姿を現した。
「パパ! ママ! お姉ちゃん! どなた! あたしがみんなを……導くっ!」
家族に白い目で凝視された。
「お前、何様だ?」
「15歳の万能感?」
「あなたは病気なのよ、そなた。この中三病!」
「あなたは、どなた?」
多数決に負けた。
そなたはただ自室に籠もり、泣いた。
「あたしは……出来損ないのこほうぎなんだわ!」