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貴族の王
こほうぎオブロン46歳の仕事は飲食店店員である。店主ではない。
彼にはそんなものよりなりたいものがあった。
幼少の頃より王になりたかった。
日本の王ではない。彼の妄想の中にだけある国『オブロン貴族王国』の国王になりたかったのだ。
だから飲食店の店主などでは満足しない。
満足しないとわかっているものに手を出すことなどしないのだ。
娘のこなたに言われた。
「パパはまだ本気出してないだけなんだよね?」
オブロンは何も答えない。
娘がバカにしてそう言っているのだとわかっているからだ。
こなたはさらに言った。
「早く王様になってよ。あたしをお姫様にして」
オブロンは紅茶を啜った。
早く自分の部屋に帰ってアレでもしてくんねーかな、と。
「お姫様になったら、あれもこれもし放題! ああっ、地球征服でもしようかしら!」
だんだんわかって来た。
バカにされているのではないということが。
娘は本気だ。頭がイカれているのだ。