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こほうぎこなたはかく語りき  作者: フリードリヒ・ハラヘルム・タダノバカ
新6章 世界名作文学大全集
56/213

百万年の孤独

 俺の名はコホギレリャーノ・ブエンコナータ。

 ちょっとこの世に産まれるのが早すぎたようだ。

 人類が誕生するより百万年も早く産まれてしまった。


 俺は川沿いに道路を作り、町を建設した。

 しかしそこに住んでくれるのはチンパンジーとかオランウータンとかの祖先ばっかりだ。

 会話をしても通じないし、せっかく作った町を破壊しまくってくれる。


 俺は言葉の通じる人類が生まれてくるのを待った。

 その間にいくつものチンパンやウータンが死んで行った。


 待ち続けて百万年ぐらい経った頃だ。

 ふと気がつくと俺が作った町の、誰も住んでいないはずの家の裏庭に、真っ白なシーツが干してある。

 この世にまだ存在しない洗濯用洗剤で洗ったようなシーツだった。


「誰かいますか?」

 俺は期待を込めてそこに声を投げた。

「もしかして人類ですか?」


 俺の声が飛ばしたように、白いシーツはブワサァーッ!とめくれると、舞い上がり、高い空へと飛んで行った。

 マジック・リアリズムだな、と思いながら、呆然と俺が見つめ続けていると、それはやがて戻って来た。

 シーツに巻きついて、かわいい猿人の女の子が降って来た。


「きゃうう、」と、その娘は言った。


 ダメだ。猿人じゃまだ言葉が通じないようだ。

 せめてクロマニヨンぐらいでないと。


 猿人の女の子は、大浴場のガラスの天井を突き破ると、湯の中へ突っ込んだ。


 様子をゆっくり見に行ってみると、猿人の女の子は湯船にプカプカ浮かんで死んでいた。

 まるでライフル銃で撃ち落とされたように。


 俺は言葉を失った。


 俺はそれからさらに五百万年生きたが、死ぬまで一言も喋らなかった。


 言葉を失ったからである。



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[一言] 直立エンジンV16気筒!(テケトー)
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