あんなカレーにな
美味しいカレーというのは結構似通っているものだが、糞マズいカレーのバリエーションは様々である。
こほうぎ家では今、とても困ったことになっていた。
父のこほうぎオブロンが夕食の調理を担当したところ、見事に糞マズいカレーを作り上げてしまったのだ。
「殺される……」
キッチンをうろつき回りながら、オブロンはぶつぶつと呟いた。
「妻に殺される……。このままでは……」
そこへ長女のこなたがやって来て、言った。
「同士たの? パパ」
「ああ、同士よ」
オブロンはニヤリと笑った。
「このカレー、お前が作ったことにしてくれないか?」
こなたは答えた。
「美味しいかどうか、問題はそれ次第よ」
「じゃあちょっと食べてみてくれ」
そう言ってオブロンは市販のレトルトカレーを食べさせた。
「普通に美味しいわ」
こなたはまんまと騙された。
「さすがはこの私様が作ったカレー。なんて普通に美味しいこと」
夕食時、母のこほうぎドリルの頭からツノが生えた。
「なんて糞マズいカレーなの!? まるでドリルで穴を開けた亭主のお腹から滴り落ちる後悔のような糞マズさ!」
「作り直せっ! こなた!」
父のオブロンも激昂した。ちょうどテレビ画面に映っていた美味しそうなカレーを厳しく指差しながら、
「あんなカレーにな!」