はっきりしてよ
ある日、こほうぎこなたが街をふらふら歩いていると、見知らぬ女性から声をかけられた。
「六本木こなたさんというのはあなた?」
「違います」
あっさりそう答えてこほうぎこなたはすれ違って行った。
女性は首を傾げ、スマホの画面を見る。
「金髪、猫耳、常に半開きの口……。間違いないはずよ……?」
しかし自分の間違いにすぐに気づくと「あっ」と声を上げ、こほうぎこなたの背中に追いつくと、再び声をかけた。
「ごめんなさい。五宝木こなたさんだったわね」
「違います」
あっさりそう答えるとこほうぎこなたはスタスタスふらふら歩いて行った。
建物の陰から2人、女性の仲間が現れる。女性と同じ黒ずくめのスーツにネクタイ姿の男性だ。
「おい、加藤。あれは間違いなくこほうぎこなただぞ。だよな? 上浜」
「ああ、あれはこほうぎこなたに間違いないよ、井上。加藤さん、もう一度声かけて来て」
加藤と呼ばれた女性は、めげそうな顔に涙を浮かべながら、みたび挑戦しに走った。
「待ってぇ〜! こほうぎこなたさん」
「はーい」
こほうぎこなたは元気よく振り返った。
「あたしがこほうぎこなただよぉっ! きゅぴーん☆」
「さっきは何が違ったのよ!?」
「わかんない? きゅぴーん☆」
「はっきりしてよ!」
「教えない。きゅぴーん☆」