マッチアプリの少女
その少女は毎日、街角でマッチを売っていました。
「マッチ……要りませんか? 一箱500円」
誰も買うわけがありませんでした。
今どきマッチと袋ティッシュはタダで配られていても受け取らない人が多いのです。
あっ。マッチ製造業や袋ティッシュ製造業の関係者の方には先に申し上げておきます。
これなフィクションであり、登場する人物、団体、マッチ、袋ティッシュは、実在のそれらとは何の関係もありません。
それな。
さて季節は冬でした。
その年の冬は地球の地軸がずれたために超寒く、街の気温は氷点下6℃まで下がっていました。
少女がそんな極寒の中でマッチを売っているのには理由がありました。
おばあさんと二人で家に籠もっていたのでは、出会いがないからでした。
外へ出て、マッチを売っていれば、優しいイケメンに出会う可能性がある。そう考えたからです。
しかしイケメンはいませんでした。
街を歩いているのは、どこを見てもブサメンばかりだったのです。
少女はあまりの寒さに、自分の売っているマッチを見つめました。
マッチには広告がプリントされてありました。
それはマッチングアプリの広告でした。
『こんな美女と本当に出会える』なんてキャッチコピーとともに、
こほうぎこなたが微笑んでいる写真がでかでかと。
そこから先は作者には書けません。
だって知らないものは書けないのですから。
それな。