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こほうぎこなたは落下する
生活指導の流先生から逃れ、学校の屋上から自由落下しながら、こほうぎこなたは並んで落下しているツッコに聞いた。
「お尻触られた?」
「ううん? 触られてないけど? こなたんは触られたの?」
「そこまではされてないわ」
「何かはされたのね」
「そんなことよりなぜこれを『自由落下』と言うのかしら」
こほうぎこなたはグングンと迫り来る地面を見ながら、のんびりと言った。
「ちっとも自由じゃないのに。むしろ重力に縛られている」
「ずんりょくって何?」
「今に……すぐにわかるわ」
ずん! と、2人の身体が校庭の地面にめり込んだ。
大根と人参のように並んで地面から生えながら、こほうぎこなたはクスクス笑った。
「ふふふふ。誰が抜いてくれるのかしら」
誰も抜いてくれなかった。
夕陽の落ちる校庭でサッカーをする男子生徒たちを眺めながら、こほうぎこなたは言った。
「重力とは恐ろしいもの。まさに魔だわ、魔」
「魔でしょ」
ツッコがツッコんだ。
「魔よ。重力の魔」
こほうぎこなたはこう言った。