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こほうぎこなたはかく語りき  作者: フリードリヒ・ハラヘルム・タダノバカ
新4章 メルヘン
37/213

赤ぞうきんちゃん

少女はいつも手に赤いぞうきんを握りしめていました


だから赤ぞうきんちゃんと呼ばれていたのです


決していじめられていたからそう呼ばれていたのではないのです




赤ぞうきんちゃんはお母さんに言われて、一人暮らしのおばあちゃんの家までとどめを刺しに行くことになりました


「おばあちゃん、あたしにとどめを刺されて喜んでくれるかな。うふっ」


おばあちゃんの家まで行くには暗い裏通りを通らないといけません


赤いぞうきんを握りしめてガラの悪いお兄さんの間を通り抜けて歩いていると、オカミさんが腕を組んで、怒った顔をして前方に立ち塞がっていました




オカミさんが言いました

「あなた、なによ? こんなので掃除しましたとか言うつもり? その手に持ってる赤いぞうきんは伊達なのかしら? 窓枠もちゃんとぞうきんがけした? ホコリが残ってるわ! やり直し!」


 泣きながら窓枠に赤いぞうきんをかけていると、いつの間にかオカミさんはいなくなっていたので、赤いベロを出すと、赤ぞうきんちゃんはヒヒヒと笑いながらバックレました


っていうか、別に掃除をする義務はなかったのです




おばあちゃんの家につくと、ベッドにおばあちゃんが寝ていました


布団を頭まですっぽりとかぶっているので、それが本当におばあちゃんなのかどうか、わかりません


「おばあちゃん、お顔を見せて」

赤ぞうきんちゃんは声をかけました

「そんなんじゃ本当におばあちゃんなのかどうかわかんない。違う人を刺したらあたし、犯罪者になっちゃう」


「私はおばあちゃんですよ」

オカミさんは声色を作って言いました

「あんたのおばあちゃんですよ。早くとどめを刺しておくれ」


その頃、本物のおばあちゃんはパチンコに行っていました


連チャンが止まらなくなって帰れずにいたのです


赤ぞうきんちゃんはオカミさんの作った声があまりにおばあちゃんそっくりだったので、安心して布団の上から刺しました


赤いぞうきんの中にはメスが仕込まれていたのです


オカミさんは文句を言いました


「いきなり刺すやつがあるかい! ここは『おばあさんの耳はどうしてそんなに大きいの?』とか聞く場面でしょーがっ! その手に持ってる赤いぞうきんは伊達かい!?」


「あなたの耳はそれほど大きくもないわ」


「『おばあさんのお口はどうしてそんなに裂けたように大きいの?』とか聞く場面でしょーがっ!」


「あなたのお口は普通だわ」


「あぁ……。そうかい……。じゃ、大人しく死ぬよ」


「あなたは死なないわ」

赤ぞうきんちゃんは言いました

「私が守るもの」



こうして赤ぞうきんちゃんはおばあちゃんにとどめを刺し、世界の平和は守られました



その頃、こほうぎこなたは裏の控え室で、ずっと出番を待っていましたが、お話はこれでおしまい



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