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こほうぎこなたはかく語りき  作者: フリードリヒ・ハラヘルム・タダノバカ
新4章 メルヘン
36/213

ヘンなエンゼルがグレーてる

「お前なんかいらない」

 こほうぎこなたが言いました。

「出てけ」


「いやだよ」

 ヘンなエンゼルは口ごたえをしました。

「ぼくはずっとここにいてやるんだから」


 こほうぎこなたは貧乏です。その日の借金を払うお金もないほどでした。食べるものは毎日鶏のからあげ。ぶくぶく太るくせにお金はないのです。


 ヘンなエンゼルに食わせる唐揚げはないのです。


 おまけにこほうぎこなたが木こりの仕事から帰ってみると、ヘンなエンゼルがお鍋を床にひっくり返し、床じゅうをこぼれた煮汁でべっとべとにしたりしているので、はっきり言ってうざいのでした。


 ヘンなエンゼルにとっては、こほうぎこなたの部屋は楽園でした。毎日唐揚げは食べられるし、いたずらもし放題。自分はお金をまったく使わずに、自由気ままに生きて行ける場所なのでした。


 こほうぎこなたはヘンなエンゼルを外へ連れ出しました。近所の公園に行ってみんなのさらしものにしてあげようと騙して連れ出したのです。ヘンなエンゼルはみんなに自分のチンコを見てもらうのが大好きだったので、喜んでついて行きました。


 公園の中に深い深い森がありました。なぜ公園の中にそんなものが? なんて思ってはいけません。あったのです。


 こほうぎこなたは切り株にヘンなエンゼルを座らせると、言いました。


「ここで待っておいで。あたし、あんたをここに捨てるから」


 その言葉を信じて、ヘンなエンゼルは待ちました。待っても、待っても、こほうぎこなたは戻ってきません。やがてようやく言葉の意味に気づくと、叫びました。


「捨てられた!」


 ヘンなエンゼルは飼い主に似てバカだったので、帰り道なんてわかりません。ポケットの中には小石も唐揚げも入っていましたが、それを道にまいて歩き、それを辿って家に帰るなんて、そんな賢いどこかのヘンゼルくんがするみたいなことは考えもしていませんでした。


 森の中をさまよい歩いていると、目の前にポップな色使いの家が見えてきました。その家はおかしな家でした。決してお菓子の家ではありませんでした。


「なんておかしな家だ」


 そう言うと、ヘンなエンゼルは喜んで家を食べはじめました。壁はモルタル、屋根は瓦で出来ていたのです。無理やり固いそれを歯を欠けさせながら食べていると、住人が帰ってきました。


「何をしている!」


 警察を呼ばれ、こってり絞られ、家に帰されると、こほうぎこなたは賠償金を請求されました。


 こほうぎこなたはヘンなエンゼルを泣いて抱きしめました。捨ててはじめて、自分がどれだけヘンなエンゼルを愛していたかを知ったのです。


 でも賠償金の額を聞くと、また森に捨てに行きました。


 捨てられたヘンなエンゼルは、またおかしな家を見つけると、食べはじめました。


 こうしてイタチごっこは続いて行きました。


 めでたし、めでたし。



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