こほうぎこなたは通学する
こほうぎこなたが丘を下る通学路をのんびり歩いていると、カラスに出会った。
電柱の途中に止まって、カラスが見下して来る。
「オイ、こほうぎこなた」
話しかけて来た。
「てめー、オレらのこと真っ黒いとか言いやがったよな? アホー、アホー」
「真っ黒いのは正しい」
それだけ言うと、こほうぎこなたは無視して学校へと歩いて行った。
カラスは怒って追いかけて来た。
「おはよー、こなたん!」
後ろから元気よく駆けて来たのは仲良しの横辛筒子だ。
「ごきげんよう、ツッコ。今日も遅刻?」
「あんたもね」
2人はにこにこ笑いながら、並んでゆっくり、決して急ぐことなく森の通学路を歩いて行った。
しばらく行くと森の中の道の上に、一人の中年男性がうずくまっていた。ボロボロの服に身を包み、やって来る二人を待ち構えるように見ている。
「先生、おはよう」
そう言いながらこほうぎこなたは通り過ぎようとする。
「いや、さすがにこれ、先生じゃないから!」
ツッコがツッコんだ。
「人のこと『コレ』って言うなや」
男がいきなり襲いかかって来た。
カラスと男がぶつかる。カラスのくちばしが男の目に入った。男が振り上げていた拳がカラスの頬を殴打した。2人は相討ち。ばっさり道の上。
「あはは」
「うふふ」
こほうぎこなたとツッコは楽しそうに通学を続けた。
学校に着くと昼休みに入っていた。
ちょうどよかったので2人は忍び込むように玄関から入り、お弁当を持って屋上へ直行した。
屋上に校門が作ってあった。その前ではさっきのボロボロの服を着た中年男が待ち構えている。
「きっとここへ来るだろうと思って待っていた」
男の正体は生活指導の流先生だった。
「おまえら、刈り上げにしてやるわ!」
「流先生!」
こほうぎこなたが声を上げる。
「どうしたらそんな言い間違い出来るんだ」
流先生は薄い頭を守りながら舌打ちした。
「突破するよ、ツッコ!」
「それ言うなら『とっぱ』だよ、こなたん」
2人は屋上の柵を飛び越え、自由とは何かを知った。