白い花 バカの花、咲いた
あたしは毎日違う友達と帰る。
家が逆方向でも無理やり帰る。
それが趣味だからである。
「こほうぎさん、一緒に帰らない?」
今日は変人として有名なこほうぎこなたさんを誘ってみた。ちなみに会話をするのはこれが初めてだ。
「あら、最音痴さん。私とそんなに帰りたいのかしら?」
こほうぎさんはあたしの気持ちを嘲笑うように言った。
「この私と? 家に? 帰宅? フフフ……」
ちなみにあたしの名前は最音痴ではなく西園寺だが、気にしない。わざと『くさいうんち』と読み間違える谷くんよりはよっぽどましだからだ。
「ええ。ご一緒に帰ってみたいんですの」
あたしは負けじと変人のフリをする。
「よろしくって?」
「いいけど、私、帰りがけにフロアーショップに寄らないと……」
「あら! 付き合いますわ!」
あたしは付き合いのいい子のフリをした。
「どんな床を購入なさるのかしら? 見るのが楽しみ。フフフ……」
こほうぎさんはフラワーショップに入って行った。
「ここが……フロアーショップですの?」
「ええ。ここがフロアーショップ」
「えーと……」
あたしが戸惑っていると、こほうぎさんがお店のおじさんに声をかけた。
「バカの花、ありますか?」
「いつものですね?」
おじさんは白いバラを取り出し、こほうぎさんに求婚した。
ダメだ、あたし。
こんなにも知らないことがあったんだ。