顔に泥を塗る
こほうぎこなたは小説を読んでいて、んっ? と思った。
『貴様……、俺の女房の顔に泥を塗るつもりか!』
ん?
ん? ん?
ん? ん? ん?
「お父さまに聞いてみよう」
小説にしおりを挟むと、自分の部屋を出た。
「お父さま」
「なんだ、どうした。珍しいな。ハムスター柄のネグリジェ姿を俺に見られるのをあんなに嫌がっていたのに」
「教えてほしいんですの」
「何をだ?」
「ここの意味がよくわかんないんですの」
「どれどれ。……ああ、これはつまり、『恥をかかせる気か?』みたいなことさ」
「どうして顔に泥を塗られたら恥ずかしいんですの?」
「そりゃあ、みっともないだろう。おまえは誰かから顔に泥を塗られたら、嫌じゃないのか?」
「泥パックは気持ちいいし、美しくなるためのものですから、嬉しいですわ」
「なるほどな」
「どうしてこのお方は、奥様の顔に泥パックをされるのをこんなにも激怒されてらっしゃるんですの?」
「たぶん、この時代に泥パックはなかったんじゃないかな」
「このお方、転生者ですのよ! 現代日本からナーロッパに転生されてるのだから、泥パックを知らないはずがないですわ!」
「すまない。めんどくさくなった。現役の国語教師に聞いてくれ」
「お母さんは確かに現役の国語教師ですけど、小学校の先生ですのよ? そんなひとにわかるのかしら?w」
「 」