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大幹部、鰯田鰹節
料亭にて。
憧れていたタラの芽の天ぷらを前に、広域暴力団『ほわほわ組』大幹部、鰯田鰹節は、感動に震えていた。
「この……鮮やかな苦み……。やはりスーパーの惣菜とは一味違うなッ」
そう言いながら、じつは鰯田はスーパーの惣菜コーナーのタラの芽すら過去に食べたことはなく、これが89年の人生で初めて口にしたタラの芽の味であった。
ふすま(小麦粉の)が暴力的に蹴倒され、鉄砲玉が飛び込んできた!
「オルァー! 鰯田ァー! わしにもタラの芽食わせろやァー!」
しかし鰯田は目を瞑り、ひたすらにタラの芽の天ぷらを味わっていた。
ああ……。作者も食べたい。
作者はスーパーの惣菜コーナーのそれしか食べたことがないのであった。
そしてもちろん、今、ビールを飲んでいるのである!