こほうぎの家に産まれて
わたしが居間でライトノベルを読んでいると、お父さんがニコニコしながら聞いてきた。
「なあ、そなた。こほうぎの家に産まれてよかったと思うことって、なんだい?」
「パパの子供に産まれられたこと」
お父さんが期待してるのはそんな答えだって、わかってた。
でもそれだけは絶対に言ってあげたくない。
だってわたしは嘘つきにはなりたくないから。
無言でソファーから立ち上がり、自分の部屋へ上がった。
こんなへんな家、早く出て行ってやる。男でも作って駆け落ちしてやる──そう思いながら。
階段を上がると妹のどなたがいた。うずくまって、何も考えてないような顔をしていた。
かわいい妹。頭がおかしいから、こほうぎの家に産まれた不幸なんてわかることも出来ない。
頭を撫でて、ぎゅっと抱きしめた。
「どなた?」
そう聞いて来たから、微笑んであげた。
「わたしはこほうぎそなた。あなたのお姉ちゃんよ」
するとどなたの後ろから、にゅっと頭のハゲたおじさんが顔を出した。
「どうも。長介と申します」
なんかそんなことを言った。
「あなたの妹さんとデキてしまいました。これから彼女と駆け落ちしますんで、よろしく」