123/213
どうにもならなかった
どうなったのか、あたしにはよくわからない。
でも、長介さんは優しくて、とてもあたしを尊敬してくれて、あたしの嫌がることは何もしなかった。
初めて飲んだお酒で世界がぐるぐる回って、あたしは床に倒れて、仰向けになったコガネムシみたいにばたばた手足を動かして、口からヨダレとか垂らして──
たぶんあたしは相当みっともなかった。
でも長介さんは、そんなあたしをちゃんと人間扱いしてくれた。
それだけは覚えてる。
それだけ、それしか、覚えてはないんだけど。
朝、目覚めると、朝だった。
あたしはがばっと起き上がると、聞いた。
「どうなった!?」
部屋には誰もいなくて、誰かが暮らしてる気配すらなくて、あたしは薄汚れた畳の上にスッポンポンで、春の隙間風が冷たかった。