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こほうぎどなたはドナーだ
ほにゃひれ直人は救急車で病院に運ばれた。
暴漢にピストルで撃たれ、心臓に穴が空いたのだ。
ぴゅうぴゅうと胸から血の噴水をあげる直人に付き添って、こほうぎどなたは救急車に乗っていた。
頑張って──
頑張って、生きて!
心臓に穴が空いたぐらい、何よ!
心の中ではそう励ますが、口からはいつもの一言しか出てこない。
「ど、どなぁ〜たぁ〜……」
そんな自分の声を聞いて、思った。
そうだ! ドナーになろう!
あたしの心臓をひとつ、あげる! 直人にあげる!
どうせ心臓なんて2つあるものだから、ひとつぐらい……
もちろんこほうぎどなたにもふつうの人間同様、心臓はひとつしかなかった。
しかし、彼に心臓を捧げる必要はなく、ほにゃひれ直人は生き返った。
すべて、こほうぎどなたの、かわいい宇宙人柄のベッドで見ていた、夢だったのだ。
目が覚めるなり、彼女は、言った。
「ど……どなったー……!」