こほうぎどなたの濃い
「あ……、あのっ! こほうぎどなたさんですよね?」
中学校の廊下で突然後ろから声をかけられ、振り向くと、カッコいい男子が自分を見つめている。
誰だろう? 知らないけど、カッコいい。
全然知らないけど、サッカー部のエースとか、そんな感じだ。
名前が知りたかったので、こほうぎどなたはこんなふうに問いかけていた。
「どなた?」
「おっ……、おれっ……! サッカー部のエースをやってます、ほにゃひれ直人っていいます」
ほにゃひれくん……。カッコいい名前。
こんなカッコいい見知らぬ人が、あたしに何の用だろう?
気になったので、どなたはこんなふうに問いかけていた。
「ど、どうなった?」
「前から気になってたんです……君のこと。よかったら、おれとっ……! 付き合ってください!」
えーーー!?
そんな……あたし、『どなた?』しか言えない、つまんない女の子だよ!?
こんなあたしがいいなんて、このひと……
「どなた!?」
「君にいい子を産んでほしいんだ」
キャーーー!!!
いきなりそこまで言う!?
赤ちゃんの名前は!? なんにする? 名前は……
「どなた?♡」
「それから君には死後、臓器の提供者になってもらいたいんだ!」
それって……
それって……!
「ドナー?」
「冬には毎晩鍋をしたいんだ! 土鍋を買って……」
「どなべー!?」
「いい家庭をつくろうね! 子供をいっぱいつくって、週末にはマクドナルドにいこう」
「ドナルドさんー!?」
「そしてゆくゆくはドイツに住もう」
「どいつー!?」
とても気が合うと思った。
こほうぎどなたは輝くような笑顔でうなずいていた。