最強に目指されるものたち
ミヒうら くめこは、調子に乗っていた。
家族のためにヨイトマケをするお父ちゃんの姿を描いた鼻唄を歌ったところ、それが世界中で大ヒット。
その収入で一生遊んで暮らせるほどのドングリを手に入れた。
「でも……あたしはもっともっと強くなりたいの」
荒野を歩きながら、彼のまなざしはケバい。
「それにしても……、こんな世紀末にも歌って愛されるものなのね……アラ?」
くめこは目の前に、荒れ果てた大地にしゃがみ込んで何かをしている一人の少女を見つけた。
「アナタ、何をしているの?」
くめこが声をかけると、少女は驚いて顔を上げた。
とても可愛らしい女子中学生だ、とくめこは思い、内心嫉妬した。
しかしそれは表情には出さずに、にっこりとキモく微笑むと、言った。
「アナタ、あたしのパーソナルスペースに踏み込んでるわよ? ギッタギタに切り刻んでいい?」
「ごっ……、ごめんなさい!」
少女は慌ててぺこぺこ謝った。
「あなたのパーソナルスペースだなんて思わず……ごめんなさい!」
「まあ、いいわ」
くめこはシャキーンと出しかけていたアダマンチウムの爪をしまった。
「素直で礼儀正しい子は好きよ。ところで何をしていたの?」
「花が……咲いてたので」
少女は嬉しそうに、笑った。
「こんな荒野にも花が咲くんだなって思って、お水をあげられない代わりに微笑みをあげていたんです」
「ふーん……」
仲良くなれそうな娘だと思った。
「ところでアナタ、『こほうぎ一族』って、知らない?」
「え……っ!?」
「めっちゃ強いらしいのよ、ソイツら。あたし、ソイツらを倒して世界最強になりたくて旅をしているの。知らない?」
「しっ……、し、知りませんっ!」
不自然なまでに狼狽しながら『知らない』と言い張る少女のことを、くめこは不審に思った。
「あなた、お名前は?」
「こっ……」
少女は慌てて言い直した。
「ソナタです。こ……こぼかたソナタです」