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こほうぎオブロンの週末
こほうぎ家の父オブロンは考えていた。
忙しそうに廊下の掃除機がけをする妻をよそ目に、ダイニングキッチンでボケーとミルクコーヒーの入ったマグカップを前にして考えていた。
『ニンニクって、何肉なんだ……?』
冬である。
リビングではマントルピースに似せたストーブが無駄に点いていた。赤々と燃えるそれを遠目に眺めながら、オブロンは思わず不安になった。
『もしかして……漢字で書くと【人肉】なのか?』
『餃子にはニンニクがたっぷり使われていると聞く』
『おれは、餃子が大好きだ』
『知らないうちに俺は、人肉を大量に、この身体の内に摂取していたのではないか……?』
娘のこなたが学校から帰ってきた。
「只今〜」
『お帰り』も言わず、オブロンはすかさず娘を問い詰めた。
「なぁ、こなたよ。おまえはもしかして、おまえの人肉を誰か悪い男に食わせているのかい?」
「わたくしの大蒜を?」
「おおびるじゃない。人肉だ」
「わ、わたくしの大蒜を!?」
「なんか嫌らしい言い方やめろ」
「わっ……わたくしの大蒜美を誰に食わせているのかですって!?」
「もう……いい」
オブロンは、終末した。