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ニンカツ
「わたしね、妊活してるの」
楓姉が言った。
僕は意味がわからなかった。
『ニンカツ? 聞いたことのない言葉だ。にんにくカツのことかな? にんにくカツをしてるとはどういう意味だ?』
とりあえず何か言わないといけないと思い、「それはスタミナつけないとね」と言ってみた。
楓姉は嬉しそうに笑い、うなずいた。なんか合ってたようだ。
「わたしはトンカツしてるのよ」
楓姉にべったりくっついて女子高生が言った。
おまえはどうでもいい。無関係者だろう。早く帰ってくれ。
「そして猫本さんはニンカツしてるの」
女子高生がそう言って天井を見た。
病院の待合室の天井に、小さなオッサンがひっついていた。
苦しそうな表情でこっちを見下ろすと、汗をボタボタ垂らしながら、言った。
「拙者、ニンジャでござる」